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「Amazonは下請け配送業者が起こした事故の責任を回避している」という指摘

by rawpixel.com

オンライン小売市場で急速な成長を遂げているAmazonは、ユーザーの欲する豊富な商品を揃えていることに加え、配送網を整備して商品を迅速に配送することで顧客の支持を集めています。その一方で、Amazonから商品の配送を請け負っている下請けドライバーたちの過酷な労働実態が糾弾されることもありますが、Amazonは下請けドライバーが起こした事故の責任を回避していると非営利のニュースメディア・ProPublicaが報じています。

How Amazon Hooked America on Fast Delivery While Avoiding Responsibility for Crashes
https://features.propublica.org/amazon-delivery-crashes/how-amazon-hooked-america-on-fast-delivery-while-avoiding-responsibility-for-crashes/

Amazonは自社倉庫の建築や輸送網の構築に多額の投資を行い、多くの商品を注文されてからわずか1、2日ほどでユーザーのもとまで届けることができます。さらに配送に関してUPSといった既存の配送業者への依存を減らすため、Amazonは多くの国々で小規模な下請け業者を雇い、正社員を雇うコストを削減してきました。

ProPublicaが行った調査によると、Amazonの下請けドライバーが起こした重傷者や死者を伴う大規模な事故が、2015年6月以降だけで60件以上も発生していたとのこと。そのうち10件では死者が出ていますが、Amazonが事故に関与していたとの報道がほとんどの場合で行われないだけでなく、多くの被害者はAmazonを訴えることをせず、裁判所や警察の記録にもAmazonの関与が示されていないケースが多いそうです。

Amazonは「下請け業者が起こした事故について法的責任を負いません」と主張しており、下請け業者とAmazonは、事故の際に法的責任をAmazonが負わない契約を交わしています。しかし、下請けドライバーの仕事をAmazonが厳格に管理していることは明らかだとProPublicaは指摘。Amazonはアプリを介して配達の順序やルートを下請けドライバーに指示し、配達が時間に遅れないように監視しているとのこと。

by Michael

Amazonは下請けドライバーに対して安全トレーニングプログラムを提供し、配送ネットワーク全体の安全性を向上させるために多額の資金を費やしていると主張しています。ところが、ProPublicaが調査した下請けドライバーが起こした事故の多くでは、ドライバーが乗っていた車両にAmazonロゴは入っておらず、個人や別の企業が所有する小型のトラックやバンを使用していました。

実際にどれほどのAmazonの下請けドライバーが事故を起こしたのかを把握することは、Amazonが情報を開示していないため非常に難しいとProPublicaは指摘。アメリカではFederal Motor Carrier Safety Administrationが運送トラックを規制し、トラックが起こした事故データを収集していますが、Amazonの下請けドライバーが使用する小さな貨物バンについては規制対象外であり、データ収集対象に含まれていないとのこと。

また、Amazonは下請けドライバーが使用する車両にAmazonロゴを付けることを避けており、たとえ下請けドライバーが事故を起こしたとしても、外部からはAmazonが関連していることがわかりにくくなっています。たとえばマサチューセッツ州ブレーンツリーという都市が、「Amazon倉庫から商品を配達する車両にはAmazonのラベルを付ける」ことを義務づける規制を設けようとしたことに対し、Amazonは「ラベル付けの要求は不合理だ」と訴訟を起こしています

by rmscott52

Amazonの配送サービスは他社の追随を許さないレベルに進化しており、アメリカ国内におけるAmazon商品の配送に占める下請け業者の割合も次第に大きくなっています。2015年には下請け業者がAmazonの配送ネットワークに占める割合は3%以下でしたが、2019年には23%にまで上昇。2024年までに43%ほどになると予想されています。

一般的に、下請け業者が依頼主と独立した業者かそうでないかを線引きする基準は、仕事を依頼する企業がどれほどのコントロールを下請け業者に働かせられるかという点に左右されるとのこと。Amazonは下請け業者が自分たちでドライバーを雇い、自由に解雇できる点を主張して「下請け業者とAmazonは独立している」と説明しています。

ところが、Amazonは商品を配送するドライバーについて作業書で指示し、配送ルートの指示や配送状況の追跡まで行っていることが過去の裁判で明らかになっています。Amazonが実質的に下請け業者を雇用しているといえるのではないかと、ProPublicaは疑問を呈しました。

by Global Panorama

Amazonは下請け業者のネットワークを構築するため、Amazon Flexというアプリを提供して個人事業主を集めています。誰でも気軽にAmazonの下請けドライバーとして勤務できるようにするこのシステムですが、商品の配送ドライバーは事故の危険性が伴う職業であるとProPublicaは指摘。たとえばUPSでは数百万ドル(数億円)規模の施設でドライバーを訓練し、VRや実際の障害物を使用した訓練コースを使い事故を回避する方法を学んでいます。

一方、Amazon Flexに登録した下請けドライバーが受ける安全トレーニングは、せいぜいスマートフォンで視聴できる講習ムービーおよび40ページほどの冊子程度だそうです。実際にAmazon Flexに登録した70歳のドライバーが2017年に事故を起こし、死亡するという事故も起こっているそうです。


また、交差点で対向車線を横切って行う左折(左側通行の日本では右折)では事故の危険性が高いことが知られており、UPSなどの配送業者では左折を行わない配送ルートを出力するアルゴリズムを使用しています。ところがAmazonでは、この安全な配送ルートを出力するアルゴリズムが一部の下請けドライバーにしか組み込まれていません。

さらにUPSなどの配送業者とAmazonの下請けドライバーにおける大きな違いは、一般的な配送業者が毎日決まったルートを走行するのに対し、Amazonの下請けドライバーは毎日同じコースを走るわけではなく、全く走ったことのない宅配ルートをAmazonから指定されることもあるという点です。そのため、下請けドライバーはほとんどの場合で、見知らぬ土地を走ることになるとのこと。

by Acharaporn Kamornboonyarush

多くの問題点がAmazonの下請けドライバーについて指摘されていますが、Amazonは下請けドライバーが起こした事故についての責任を回避し続けています。Tim Hauckさんは、2018年にAmazonの下請けドライバーが起こした事故により、妹のStaceyさんを亡くしました。「Amazonで注文した商品が2日で届くことは素晴らしいことです。しかし、Amazonが自身の責任を逃れ続けている点は不安です」「テクノロジーによって便利さを手に入れましたが、そこには人的コストがかかっています」と、ProPublicaの取材に対して述べています。

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in メモ,   ネットサービス,   乗り物, Posted by log1h_ik

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