黒人のレストラン経営者を助ける食事配達サービスの取り組みは「十分に機能していない」との指摘
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により飲食店は大きな打撃を受けており、特に黒人が経営する企業や店舗は、白人が経営する事業の倍以上の割合でCOVID-19によって倒産していることが分かっています。こうした状況を改善すべく、Uber Eatsなどの食事配達サービスは黒人経営の飲食店を補助する取り組みを展開していますが、経営者からは「取り組みは不十分」との声も上がっています。
Delivery apps say they’re trying to boost Black-owned businesses. Is it working? - Protocol
https://www.protocol.com/manuals/small-business-recovery/tech-highlighting-businesses-owned-by-people-of-color
2020年5月に発生した、警察官による拘束で黒人男性が死亡した事件をきっかけに、Uber Eats・DoorDash・Postmatesら食事配達サービス大手は、一斉に黒人が経営する飲食店に対する配達手数料の請求を免除する取り組みを打ち出しました。
食事配達サービス各社は、こうした取り組みが大きな効果を挙げたことを主張しています。Uberの発表によると、6月に取り組みを開始してから1週間で、黒人が経営する飲食店への注文は75%増加し、その後も取り組み開始前に比べて20%増の水準で推移しているとのこと。またDoorDashも、自社の取り組みにより、6月から8月にかけての黒人事業者との取引は50%増加したとしています。
IT系ニュースサイトProtocolが黒人経営者らに取材したところ、多くの飲食店のオーナーや代表者から、食事配達サービスの取り組みに感謝する声が寄せられました。
ワシントンD.C.を拠点とするレストラン「Oohs and Aahs」のオーナー兼シェフのオジ・アボット氏は、Protocolに対して「私たちは食事配達サービスからなにかをもらっているわけではありませんが、『無料配達のおかげでこれだけ多くの客が来ましたよ』というサービス側からの通知を見ると、『なるほど、確かに有益ではある』と思います」とコメント。
また、GrubhubのプロモーションCMに出たこともあるという「Ben's Chili Bowl」のヴィダ・アリ氏は、「食事配達サービスが努力していることは間違いなく伝わってきます」と話しました。
黒人経営の飲食店を支援する団体Dine Black LAのエグゼクティブディレクターであるジェイド・スティーブンス氏は、食事配達サービスの取り組みの効果について、「黒人経営の飲食店は、主に低所得者層の多い地域に立地しており、コミュニティの間ではよく知られています。さらに、食事配達サービスが一般に浸透し、それを介して店を売り込む機会が得られたことで、それまで開拓できていなかった新しい客層にリーチすることができたのでしょう」と分析しています。
しかし、食事配達サービスを利用したことで、新しい負担に直面している経営者もいます。ワシントンD.C.のレストランである「HalfSmoke」と「Butter Me Up」の経営者であるミシェル・アンドラーデ氏は、「配達に時間がかかりすぎる」「料理が冷めている」「品物が足りない」といったトラブルが発生した場合、対応を迫られるのは飲食店側だと指摘。「食事配達サービスからのお客様もお客様には違いありませんが、きちんと連絡をとることができないお客様です」と話しました。
また、配達手数料の免除を受けてもなお高額なコストに苦心している経営者もいます。ジョージア州アトランタにある「TwistedSoul Cookhouse&Pours」のオーナー兼料理長であるデボラ・ヴァントレス氏は、「私たちにとっては、コストが高すぎると感じます。配達料手数料がカットされても、取り次ぎ手数料や売上手数料など、さまざまな名目で料金が取られてしまいます」と述べました。
高すぎる配達手数料に苦しむ飲食店を支援するため、アメリカ各地の自治体で「食事配達サービスの配達手数料の上限を15%に設定する」といった施策が講じられています。しかし、ヴァントレス氏によると、食事配達サービスのコストは配達手数料だけではないため、結局売上の30%近くが取られてしまうケースもあるそうです。
こうした証言を踏まえて、Protocolは「飲食店と食事配達サービスの関係は、時に横暴だったり搾取的だったりすると感じられることがあり、飲食店の黒人オーナーたちは、食事配達サービスの取り組みがそれを解決できていないと考えています」と結論付けました。
・関連記事
Googleとフードデリバリーサービスが「広告」を使って地元のレストランから顧客を奪っているとの指摘 - GIGAZINE
便利な出前代行サービスの裏でレストラン側が泣いているという証言 - GIGAZINE
口コミサイトに掲載された電話番号が「予約に応じて手数料を中抜きする」専用の番号にすり替えられていた - GIGAZINE
Uber Eatsなどの食事配達サービスは今や人々が生きる上で必要不可欠な仕事になったとの指摘、「正規労働者として認めるべき」との声も - GIGAZINE
UberとLyftが「ドライバーを社員として扱うように」と裁判所から命令される - GIGAZINE
新型コロナウイルスの影響で急成長した「フードデリバリーサービス」が赤字を垂れ流している理由とは? - GIGAZINE
新型コロナウイルスのパンデミックによりニューヨークでは多くの中小企業が廃業しているとの指摘 - GIGAZINE
・関連コンテンツ