新型コロナウイルスの影響で急成長した「フードデリバリーサービス」が赤字を垂れ流している理由とは?
新型コロナウイルスの感染拡大により外出や外食が制限されたことで、レストランの食事を自宅の玄関に届けてくれるフードデリバリーサービスは「人々が生きる上で必要不可欠な仕事になった」ともいわれています。しかし、その仕事の重要性にもかかわらず、フードデリバリーサービス業界は依然として苦境に見舞われていると報じられています。
Everyone's Ordering Delivery, but Apps Aren't Making Money | WIRED
https://www.wired.com/story/everyones-ordering-delivery-apps-not-making-money/
新型コロナウイルスが猛威を振るう中、フードデリバリーサービスの市場規模は拡大しています。クレジットカードの使用履歴から消費者動向の分析を行っているSecond Measureの調べによると、2020年4月におけるフードデリバリーサービス市場全体の売上高は、前年同期比の2倍を記録しているとのこと。
しかし、フードデリバリーサービスの収益は市場規模の拡大ほどには改善していません。配車サービス大手のUberは、同社のフードデリバリーサービス事業であるUber Eatsの2020年第1四半期における取引総額が、前期比で52%増加したと発表しましたがコストなどを差し引いた収支は赤字でした。Uberによる買収が取り沙汰されているフードデリバリーサービスのGrubhubも、2020年第1四半期の収益が12%増加して3億6300万ドル(約390億円)になったと発表していますが、やはり赤字を計上しています。
需要が伸びているにもかかわらず、フードデリバリーサービスが振るわないのは、業界全体が激しい競争にさらされているためだと見られています。Grubhubは投資家に公開した資料の中で、「フードデリバリーサービスの利用者は、食事の配達を注文する前に、よりお得な情報やプロモーションを見つけるため複数のサービスをチェックしています。また、一部のレストランのオーナーが、フードデリバリーサービス経由でなく直接配達のオーダーを受け取れるように、配達する商品と一緒にメニュー表を忍ばせている事例もあります」と報告しました。
こうした中、フードデリバリーサービスは大手外食企業ではなく、小規模な独立系のレストランとの取引に活路を見いだそうとしています。Grubhubの幹部は、大手外食企業との大口契約をめぐるフードデリバリーサービス同士の争奪戦について、「全国規模の企業ブランドが手数料の交渉でしのぎを削っているため、Grubhubに残された余地は少ない」と述べています。これとは対照的に、独立系のレストランはフードデリバリーサービスの需要創出能力に高い期待を寄せているため、多少手数料が高くても条件を飲むことが多いとのこと。
しかし、小規模なレストランの争奪戦も激化しつつあります。既に、カリフォルニア州サンフランシスコを拠点とするフードデリバリーサービスDoorDashが小規模なレストランから徴収する手数料を半額にしているほか、Uber Eatsは2020年6月30日までの期間限定で全てのレストランの配達手数料を完全に免除する方針を打ち出しています。
飲食業を専門とするベンチャー・キャピタルKitchen Fundのヴァイスプレジデントであるダン・フライシュマン氏は、「フードデリバリーサービスは、注文を受けるごとに損失を垂れ流しています。新型コロナウイルスのパンデミックが長引き、経済も厳しい状況が続く可能性が高いため、答えが見つからない状況です」とコメントしました。
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