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新型コロナウイルスのパンデミックによりニューヨークでは多くの中小企業が廃業しているとの指摘


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策として人々の外出が制限されたことを受け、世界各国の小売店や飲食店は経済的に深刻な打撃を受けています。影響は特に中小企業にとって深刻であり、アメリカのニューヨーク市に拠点を置く中小企業の3分の1が廃業に追い込まれているとニューヨーク・タイムズが報じました。

One-Third of New York’s Small Businesses May Be Gone Forever - The New York Times
https://www.nytimes.com/2020/08/03/nyregion/nyc-small-businesses-closing-coronavirus.html

2020年3月初旬、ニューヨーク市のブルックリンにあるカリビアン料理店の「Glady's」は、1週間に3万5000ドル(約370万円)もの収益を上げていたとのこと。しかし、それからたった5カ月後の2020年8月に、Glady'sはCOVID-19のパンデミックの影響を受けて閉店してしまいました。


Glady'sと同様にCOVID-19のパンデミックで閉店や廃業を余儀なくされた中小企業は、レストランだけでなく書店やアミューズメント施設など多岐にわたります。ビジネスレビューサイトのYelpが集計したデータによると、ニューヨーク市では2020年3月1日以降だけで2800を超える事業者が完全に閉店・廃業しているとのこと。閉鎖された店舗の約半数は観光客やビジネスマンが消えたマンハッタンにあり、この数値はアメリカの他のどの都市よりも多いそうです。

ニューヨーク市といえば大企業のオフィスビルが密集しているイメージがありますが、実はニューヨーク市内の会社は98%が中小企業であり、全労働者の約半数を占める300万人以上が中小企業に勤めています。こうした中小企業はレストランやコーヒーショップ、書店、金物店、アミューズメント施設などさまざまで、ニューヨーク市の個性を形作ってきたとのこと。


COVID-19のパンデミックが始まった当初、多くの中小企業はパンデミックの影響が一時的なものであり、やがて事業を再開できるとの見通しを持っていました。ところが、徐々に経済が再開される中で、中小企業への悪影響は永続的なものになってしまったとニューヨーク・タイムズは指摘。アメリカ政府がさまざまな支援策を講じているものの、生活様式の変化や第2波の脅威によって中小企業は苦境に追い込まれています。

最も早くパンデミックの影響を受けたのは、ニューヨーク市へやってくる大量の通勤客をメインターゲットにする小売店でした。非営利の教育機関であるBank Street College of Educationが運営する「Bank Street Bookstore」という書店は、売上の90%以上が店頭での販売であり、顧客のほとんどが近所に住む住人や大学生、小学校の先生などだったそうです。店長のCaitlyn Morrissey氏は、「私たちの基本は対面販売であり、ウェブ販売ではありませんでした」と述べています。Bank Street Bookstoreは事業の継続を断念し、8月中に閉店するとのこと。

体力がある大企業とは異なり、書店や食料雑貨店、バー、レストラン、歯科診療所、ジム、デイケアセンターといった中小企業は、数カ月どころか数週間~数日間を乗り切るほどの余剰資金も持っていません。Yelpは消費者向けの事業者に焦点を当てているため、ニューヨーク市で閉店した事業者数はYelpの報告数より多いだろうとニューヨーク・タイムズは指摘。モバイル決済企業のSquareがニューヨーク・タイムズに提供したデータによると、Squareを利用するニューヨーク市の企業は3月1日~4月1日の間に取引額が半減したそうです。


アメリカ政府はCOVID-19のパンデミック対策として、中小企業向けに数千億ドル(数十兆円)規模の融資を提供しています。しかし、融資のほとんどは家賃の支払いや従業員への給与に消え、経済が回復するまで持ちこたえることができない中小企業が続出しており、政府のさらなる支援策を必要としているとのこと。

ハーバード大学の研究チームが行った(PDFファイル)研究によると、アメリカでは3月上旬~5月上旬の2カ月間で11万もの中小企業が廃業していることがわかっています。ニューヨーク市では特にレストランを含むサービス業が深刻なダメージを負っており、NYC Hospitality Allianceによると市内のレストランやバーの80%が、6月の家賃を全額支払うことができていないそうです。

閉店したカリビアン料理店のGlady'sは、パンデミック中の2020年6月にもレストランの横でテイクアウトのトロピカルラムドリンクを販売し、1週間に1万2000ドル(約130万円)ほどの売上を確保していました。ところが、パンデミックに伴って家賃の減額を許可してきた家主が、「2020年7月から8000ドル(約85万円)の家賃を全額支払うように」と要求してきたことを受け、6月中に閉店することを決めたとのこと。

オーナーのWilliam Garfield氏は、Glady'sはドリンクから一定の収入を確保していたとはいえ、これでは収支を合わせることができなかったと述べています。「パンデミック前の私たちは繁盛していました。『繁盛しているならパンデミックを生き残ることができるはずだ』という考えに、私は同意できません」とGarfield氏は話し、自らの手でどうにもできない状況の中でビジネスが破綻することはとても腹立たしい、とニューヨーク・タイムズに訴えました。


テナント物件を所有するオーナーの中には、事業者に対して家賃の減額を申し出る不動産企業もあります。ニューヨーク市内に2000ものテナントを所有するGFP Real Estateは、テナントに入っている事業者らが連邦政府の支援を受ける手続きを助け、閉店中の家賃を減額する措置を執ったとのこと。GFP Real Estateの共同最高責任者であるBrian Steinwurtzel氏は、「事業者らを追い出したり戦ったりしても意味がありません。私たちは互いに助け合う必要があります」と述べています。

それでも、パンデミックの影響は深刻だったそうで、2020年7月にはニューヨーク市内でテナント不在の空き店舗が目立つようになり、多くの中小企業が状況の激変についていけなかったことがうかがえます。中小企業のオーナーは家賃の支払いやウイルスの流行だけでなく、アメリカ政府の対応策の不確実性にも対処しなければなりません。たとえば、ニューヨーク市では7月中に屋内での食事が許可される予定でしたが、感染者数の増加を受けて規制解除の数日前に再開計画は中断されてしまいました。

2020年4月に廃業した子ども向けのデイケア施設・Busy Bodiesを運営していたAndrea Dillon氏は、「中小企業のオーナーとして、まだ閉店していないところがあることに驚いています」とコメント。ケータリング企業のThroughMyKitchenを運営するEvelyn Echevarria氏は3月以来イベントの受注がなく、「中小企業はパンデミックを生き残ることができません。これは私や他の多くの人々にとって壊滅的です」と述べました。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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