サイエンス

微生物学者が赤ちゃんにキスをしてはいけない理由を解説


「目に入れても痛くない」ということわざを体現するかのように我が子を溺愛する両親は非常に多く、愛するあまり思わずキスをしてしまう人さえいます。しかし、子どもに、特に生まれたばかりの赤ちゃんに対しては、たとえ顔にキスをする行為であっても深刻な感染症を引き起こす可能性があるとして、微生物学者が忠告しています。

Why you should never kiss a baby
https://theconversation.com/why-you-should-never-kiss-a-baby-243661


2023年にイギリスの慈善団体である「ララバイ・トラスト」が発表した調査では、実に54%もの両親が、「深刻な感染症のリスクを知らずに、家族や友人に新生児へキスをさせてしまう」と答えたことが明らかになっています。

レスター大学の臨床微生物学者であるプリムローズ・フリーストーン氏は、「赤ちゃんにキスをするのは確かに愛情の証ですが、深刻な悪影響を与える可能性があります」と指摘し、なぜキスをしてはいけないのかを解説しました。


まず、生まれたばかりの赤ちゃんは免疫システムが十分に発達していないため、深刻な感染症にかかるリスクが非常に高いという理由があります。生まれてから3カ月ほどは好中球や単球といった感染症と闘う免疫細胞の数が大人に比べて少ないため、大人や年長児では軽い症状で済む感染症が、赤ちゃんにとっては命に関わることもあります。

ヘルペスウイルス感染症がその一例です。ヘルペスウイルスが赤ちゃんの目、口、皮膚に影響するだけであれば、抗ウイルス治療でほとんどが回復しますが、仮にウイルスが全身に広がるなどして赤ちゃんの臓器に影響を及ぼすと、最悪の場合は死に至ることさえあります。赤ちゃんが若ければ若いほど、特に生後4週間はヘルペスウイルスに感染しやすくなるため、この時期は特に注意する必要があります。


また、赤ちゃんは年長の子どもや大人よりも感染性の細菌に弱く、特にB群溶血性レンサ球菌などの細胞内病原体に感染しやすいとフリーストーン氏は指摘します。これらの細菌は多くの場合、宿主の消化管や性器に住み着き病気を引き起こすことはありませんが、赤ちゃんに感染した場合、敗血症や肺炎、髄膜炎などを引き起こすとのことです。

加えて、赤ちゃんは大人には害のない種類の大腸菌にも感染しやすく、肺炎、髄膜炎、敗血症などを引き起こし、いずれも重篤な症状を招く可能性があります。


以上のことから、フリーストーン氏は「幼い赤ちゃんを持つ親は、他人にキスしないようお願いすることや、赤ちゃんに触れさせないようにすることに抵抗感を持つ必要はありません。赤ちゃんに会いにきた人が赤ちゃんの健康を本当に気遣っているのであれば、面会者はあなたのお願いを不快に感じることはないはずです。赤ちゃんは感染症に非常に弱いことを常に念頭に置いてください」と述べました。

さらに、「正当な理由があって赤ちゃんにキスをしなければならない場合、感染の危険を減らすためにできることがいくつかあります。まず、手をよく洗うこと。そして、赤ちゃんの口や顔にキスをするのは避けることです。足や後頭部にキスをしましょう。もしあなたが何らかの感染症にかかっているのであれば、特に生後1カ月未満の乳児に面会する必要が本当にあるかどうかを考えてください」とも付け加え、新生児を守るためにキスは避けるべきだとまとめました。

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in サイエンス, Posted by log1p_kr

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