サイエンス

赤ちゃんが「唾液」を手がかりにして人間同士の親密さを見分けているとの研究結果


自分を取り巻く人間関係を正しく理解することは、社会的存在である人間として重要なスキルであり、それは誰かに世話してもらわなければ生きられない赤ちゃんにとっても同様です。アメリカの研究チームが行った研究では、「赤ちゃんは唾液の交換を手がかりにして人間同士の親密さを認識している」とする結果が報告されました。

Early concepts of intimacy: Young humans use saliva sharing to infer close relationships
https://www.science.org/doi/10.1126/science.abh1054

Babies can tell who has close relationships based on one clue: saliva
https://medicalxpress.com/news/2022-01-babies-relationships-based-clue-saliva.html

人間社会では関係の親密さに区別が存在しており、人類学者らは家族や恋人といった親密度の高い人々の間で「唾液などの体液交換」が歓迎されていることを観察してきました。論文の筆頭著者であり、マサチューセッツ工科大学の博士研究員であるアシュリー・トーマス氏は、「これは赤ちゃんが関係性の区別を行うかどうか、そして唾液の交換が関係性を認識する手がかりになるかどうかという2つの疑問につながりました」と述べています。

トーマス氏らの研究チームは、赤ちゃんが関係性を認識する上で唾液を手がかりにするかどうかを調べるため、「人間の役者と人形の相互作用を赤ちゃんに見せて、その後で発生したイベントに対する赤ちゃんの反応を観察する」という実験を行いました。


最初の実験では、1つの人形に対して2人の役者が「オレンジを一緒に分け合って食べる」または「ボールを投げ合う」という、2つの異なるやり取りをする様子を見せました。次に、椅子に座った2人の役者の間で人形が苦しむ様子を見せ、赤ちゃんがどちらの役者を見るのかを観察したとのこと。ヒト以外の霊長類における過去の研究では、「赤ちゃんサルが泣いている時、群れの個体は助けを期待して赤ちゃんサルの親を見る」という傾向が観察されており、今回もその傾向に基づいて、赤ちゃんは「より人形の親密度が高く助けを期待できる役者を見る」と考えられました。

実験の結果、人形が苦しみ始めた時に赤ちゃんが見るのは「オレンジを一緒に分け合って食べた役者」である可能性が高いことが判明。赤ちゃんはボールを投げ合った相手よりも、食べ物を共有した相手の方が親密度が高いと推測することが示唆されました。

また、次の実験では2つの人形に対して1人の役者があてがわれ、より「唾液」に着目したテストを行いました。実験では、役者が「指を口の中に入れてから人形の口に入れる」または「指を額に当ててから人形の額に当てる」という行為をする様子を赤ちゃんに見せました。次に、2つの人形の間に立った役者が苦しむ演技をしている様子を見せ、赤ちゃんがどちらの人形を見るのかを観察しました。その結果、赤ちゃんたちは「指を口の中に入れてから人形の口に入れる」ことで唾液を共有した人形に目を向ける可能性が高かったと、研究チームは報告しています。


今回の研究結果は、唾液の共有が赤ちゃんにとって、自分や周囲の社会的関係を学ぶ手がかりになっていることを示唆するものです。トーマス氏は、「社会的関係を学ぶ一般的なスキルは非常に大事です」と述べ、他の種よりも長期間にわたり大人に世話をしてもらう必要がある赤ちゃんにとって、関係性を見分けることは生存にとって重要だと主張しています。

なお、今回の実験は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック前とパンデミック後に対面とZoomの両方で行われ、どちらも同じ結果が出たことから、結果はパンデミックの影響を受けなかったと研究チームは述べました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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