サイエンス

「ストレスを感じていること」を表に出す人の方が好かれるとの研究結果


小さな子どもは気に食わないことがあるとすぐに泣いたり怒ったりしますが、大人は嫌なことがあってもあまり顔には出さないものです。また、弱さを見せることを嫌って、弱音や本音を口に出さない人もいます。しかし、不機嫌なことを表に出す人はあまり慕われないというイメージとは裏腹に、「ストレスを感じていることあらわにする人ほど好かれる可能性がある」ことが、実験により判明しました。

Signal value of stress behaviour - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1090513822000162

Showing you're stressed may make you more likeable – new research
https://theconversation.com/showing-youre-stressed-may-make-you-more-likeable-new-research-182568

犬や猫などの動物は、体調が悪かったりどこかが痛かったりしてもそれを目に見えるサインとして出さないので、獣医師や動物の世話をしている人は血圧や心拍数、ホルモンレベルなどの測定に頼らざるを得ません。一方、人間はストレスがかかると顔や頭を触ったり、爪をかんだりするので、すぐに分かります。

サルや類人猿などにも非常によく似たストレスのサインが観察されることから、ストレスのサインは人や類人猿が共通の祖先から進化する過程で生まれたものだと考えられています。しかし、一体なぜ弱さを見せるような行動が発達したのかは、研究者の間で長年の謎とされてきました。


そこで、表情とコミュニケーションについて研究しているイギリスのノッティンガム・トレント大学の心理学者、ジェイミー・ホワイトハウス氏らの研究チームは、ボランティアに軽いストレスを与えてそれを人に見せる実験を行いました。

実験ではまず、被験者にストレスをかけるべく、好きな食べ物やペットを飼っているかなどを根掘り葉掘り聞いたり、プレゼンテーションや面接の練習をしてもらったりしてから、難しい数学テストにチャレンジしてもらいました。研究チームは次に、数学テストを受けている被験者の映像を別のグループに見せて、「被験者がどのくらいストレスを感じているように見えるか」を評価してもらいました。


その結果、評価者が評価したストレスの度合いと、被験者が自己申告したストレスの度合いはほぼ一致していることが確かめられました。ホワイトハウス氏はこれについて、「人間は他人がストレスを感じていることを見抜くのがかなりうまいことが分かりました。親しい友人だけが感知できるような微妙なシグナルではなく、全く知らない人に被験者のストレスを判断してもらった結果だという点は、注目に値します」とコメントしています。

さらに、評価者に「第一印象として、この人にどのくらい好感が持てますか?」と尋ねたところ、その結果は被験者のストレス行動の多さと正の相関関係があったとのこと。つまり、ストレスのサインをよく出す人の方が、見る人から好かれたという結果になりました。研究チームは、ストレスを表情やしぐさなどの非言語的なサインとして出す人の方が好意的に評価されたのは、そういう人の方がより正直な人だと感じるからではないかと推測しています。


ホワイトハウス氏は今回の実験結果について、「弱みを見せるとつけ込まれると思う人もいるかもしれませんが、自分の弱さを見せることで社会的な支援や結びつきが得やすくなるのです。人間は他のどの動物よりも協調性が高い生き物なので、自分の心に正直な人にひかれるのでしょう。特に、弱っている時ほど正直な時はないはずですから」と述べて、苦しい時や困っている時はそのことを抱え込まずに表に出した方がいいとの見方を示しました。

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in サイエンス, Posted by log1l_ks

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