古着が病原体の温床になっている可能性、古着を買った時に気をつけるべきこととは?
古着の需要はここ数年で急増しており、ファッションの幅を広げる安価な方法として利用している人もいれば、環境に優しい生活を送るために古着を好む人もいます。しかし、イギリス・レスター大学の臨床微生物学者であるプリムローズ・フリーストーン氏は「古着は病原体の温床になっている可能性がある」と指摘し、古着を買った場合にやるべきことについてアドバイスしています。
Secondhand clothes can be swimming in germs – what vintage shoppers need to know
https://theconversation.com/secondhand-clothes-can-be-swimming-in-germs-what-vintage-shoppers-need-to-know-242510
人間の皮膚には大量の細菌・真菌・ウイルスが存在しており、それらを総称して皮膚マイクロバイオームと呼ばれています。皮膚マイクロバイオームを構成する微生物には、ブドウ球菌感染症を引き起こすブドウ球菌や、レンサ球菌咽頭炎などを引き起こすレンサ球菌、カンジダ症を引き起こす真菌のカンジダ・アルビカンス、子宮頸がんなどに関連するヒトパピローマウイルス(HPV)といった病原体も含まれています。
各個人の皮膚マイクロバイオームは人それぞれに適応しており、ある人にとっては正常で無害なマイクロバイオームであっても、他の人にとっては有害になることがあります。衣服は常に人の皮膚と触れ合うため、皮膚マイクロバイオームに生息する病原菌が付着しやすいとのこと。
古着屋で売られている古着は必ずしもクリーニングに出されているわけではないため、元の所有者の皮膚マイクロバイオームに由来する細菌や、元の所有者がかかっていた感染症の病原体が付着している可能性があります。
皮膚マイクロバイオームを構成する微生物は、汗に含まれるアミノ酸や皮脂、皮膚細胞のタンパク質といったものを栄養源としているため、人が着た衣服で生存することは容易です。ほとんどの微生物は成長するために水が必要なため、脇の下や足、生殖器の周囲といった湿りやすい部位は、特に微生物の量や種類が豊富だとのこと。また、衣服に付着した料理の食べかすも、あらゆる細菌や真菌の栄養源になります。
過去の研究によると、大腸菌や黄色ブドウ球菌、化膿レンサ球菌などの病原菌は室温で最大数カ月間も衣服上で生存できることが示されており、特にポリエステル生地では200日以上も生き続けました。ほとんどの細菌は、空気中の湿度が高い時によく生き延びたとのことです。
実際にパキスタンの古着屋で売られていた衣服を調べた研究では、採取されたサンプルの多くに枯草菌や黄色ブドウ球菌の存在が確認されました。また、イランで行われた調査では、古着から皮膚感染症を引き起こす可能性のある寄生虫が発見されました。
実際に古着のせいで感染症になってしまうリスクを推定するのは難しいものの、免疫不全の人々が特に大きなリスクにさらされているとのこと。そこでフリーストーン氏は、古着を買った後は自分で着る前に洗濯するべきだとアドバイスしています。
フリーストーン氏は、「新しく購入した古着は、60度前後のお湯と洗剤で洗うことをオススメします。これによって衣服の汚れがきれいになるだけでなく、細菌が取り除かれ、病原体が不活性化されます。冷水は衣服内の病原体を取り除くのにうまく機能しません。従って、高温での洗濯が不可能な場合は、洗濯消毒剤を使用して存在する細菌を殺します」と述べています。
また、最初に古着を洗う時は通常の洗濯物と分けて洗うことや、洗濯前に抗菌洗濯洗剤を入れた熱めのお湯に2~3時間浸しておくこと、熱風を使う回転式乾燥機やスチームアイロン処理をすることなども有効だそうです。
フリーストーン氏は、「多くの古着販売業者は、販売前に衣類を洗濯していると言っていますが、それは確実ではありません。そのため、古着を購入した際は必ず洗濯することをオススメします。また、新しく買った服も、着る前に一度洗濯することをオススメします」と述べました。
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