欧州委員会が中国通販サービスのTemuを「違法製品の販売や中毒性のあるサービス設計」などの疑いで正式な調査を開始
欧州委員会は、中国のオンライン通販サービス「Temu」がデジタルサービス法に違反した疑いがあるかどうかを評価するための正式な手続きを開始したと2024年10月31日(木)に発表しました。調査では「EUにおける非準拠製品の販売」「ゲームのような報酬プログラムなど中毒性のあるサービス設計」などが焦点となります。
Commission opens formal proceedings against Temu under DSA
https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_24_5622
Temu to be investigated by EU tech regulators over sale of illegal products | Reuters
https://www.reuters.com/business/retail-consumer/temu-be-investigated-by-eu-tech-regulators-over-sale-illegal-products-2024-10-31/
EUはTemuに対して、これまでにもデジタルサービス法に基づく情報提供を求めていました。
中国発激安ショッピングサイトのSheinとTemuがEUのデジタルサービス法に基づく情報提供を求められる - GIGAZINE
今回、欧州委員会はTemuを正式に調査するにあたって、4つの懸念事項を提示しています。
1つ目は、「EUにおける非準拠製品の販売」についてです。過去に違法あるいは不適切な商品を販売して出品停止処分を受けた悪質業者が、新しいアカウントを作って再び出現するケースへの対策が不十分だと欧州委員会は述べています。また、一度排除された違法・不適合商品が別の形で再出品されることを防ぐシステムも不十分であることが指摘されています。
2つ目は「サービスの依存性を生む設計」についてで、特にゲーム的な報酬プログラムの存在が問題視されました。欧州委員会は「Temuのサービス設計は利用者の身体的・精神的な健康に悪影響を及ぼす可能性があり、その対策や軽減策が適切に講じられているかが調査対象となる」としています。
3つ目は「商品推奨システムの透明性とユーザーの選択権に関する問題」です。EUのデジタルサービス法では、レコメンドシステムで使用される主要なパラメータを開示することが義務付けられており、個人の行動分析に基づくおすすめを使用しない選択肢を、ユーザーが容易にアクセスできる形で少なくとも1つ提供することが求められていますが、これらの要件を適切に満たしているかが問われています。
4つ目は「研究者へのデータアクセス」の問題です。デジタルサービス法では、研究目的での公開データへのアクセスを研究者に提供することが義務付けられていますが、Temuがこの義務を適切に履行しているかが調査対象となっています。
欧州委員会は、以上の問題点がデジタルサービス法の第27条・34条・35条・38条・40条に抵触すると指摘。2024年9月末に提出したリスク評価報告書や第三者から共有された情報の予備分析に基づいて、正式に調査を開始すると発表しました。調査の結果、Temu側は欧州委員会の提案する是正措置、あるいはデジタルサービス法違反の決定を受け入れることが求められます。
EUの反トラスト・技術担当責任者であるマルグレーテ・ベステアー委員は「Temuがデジタルサービス法を順守していることを確認したいと思います。特に、同社のプラットフォームで販売される製品がEUの基準を満たし、消費者に害を及ぼさないことを確実なものとしたいのです」という声明を発表しました。
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