インターネットアーカイブが電子書籍の貸出をフェアユースだと主張した裁判で再び敗訴
インターネットアーカイブによる電子書籍貸出サービスが著作権侵害かどうかを争った裁判の控訴審で、第2巡回区控訴裁判所は原告である出版社側の主張を認め、「電子書籍の貸出はフェアユースにはあたらない」という判決を下しました
Appeals Court Affirms Decision Against Internet Archive for Copyright Infringement - AAP
https://publishers.org/news/appeals-court-affirms-decision-against-internet-archive-for-copyright-infringement/
Internet Archive Responds to Appellate Opinion in Hachette v. Internet Archive | Internet Archive Blogs
https://blog.archive.org/2024/09/04/internet-archive-responds-to-appellate-opinion/
Major book publishers defeat Internet Archive appeal over digital scanning | Reuters
https://www.reuters.com/legal/major-book-publishers-defeat-internet-archive-appeal-over-digital-scanning-2024-09-04/
The Internet Archive loses its appeal of ebook copyright case ruling
https://www.engadget.com/big-tech/the-internet-archive-loses-its-appeal-of-ebook-copyright-case-ruling-202452279.html
Internet Archive Takes Another Blow in Court on Copyright
https://publishingperspectives.com/2024/09/internet-archive-takes-another-blow-in-court-on-copyright/
この裁判はアシェット・ブック・グループ、ハーパーコリンズ・パブリッシャーズ、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ、ペンギン・ランダムハウスの4社が、インターネットアーカイブを訴えていたもの。
インターネットアーカイブは、2010年代から書籍をスキャンして作成した電子書籍の貸出サービス「Open Library」を展開してきました。Open Libraryは「借りられる書籍は基本的に1冊だけで、一定期間で返却すること」という、現実の図書館と同じような運用でした。
しかし2020年、コロナ禍で在宅時間が増加した一方で図書館の大規模な休館があったということで開始した「National Emergency Library(全国緊急図書館)」は、最大10冊まで待つことなく借りられるという内容で、著作権の切れていない書籍も多数含まれていたことから、「著作権侵害である」として提訴されました。
インターネットアーカイブは「全国緊急図書館も、通常の図書館と同じように本を貸し出しているだけ」「デジタル貸し出しプログラムは著作権法の対象となるフェアユースの範囲」と主張しました。
電子書籍をオンラインで読めるようにしている事例としてはGoogleブックスがあります。Googleブックスの場合、書籍の内容が検索可能なデータベースになっていて、単なるスキャンデータの公開ではなく「変形的」として認められています。
2023年8月、ニューヨーク連邦地方裁判所はインターネットアーカイブの主張を退けた上で、「インターネットアーカイブによる電子書籍の貸出は、全国緊急図書館に限らず、フェアユースの基準に準拠していない」という判決を下しました。
インターネットアーカイブが電子書籍の著作権を巡る大手出版社との著作権訴訟の一審で敗訴 - GIGAZINE
インターネットアーカイブは控訴しましたが、第2巡回区控訴裁判所は地裁判決を支持し、「フェアユースには当たらない」という原告側主張を認めました。
第2巡回区控訴裁判所のベス・ロビンソン裁判長は、電子書籍を貸し出すことについて「消費者や図書館がお金を支払い、著者が新たな作品を作ろうとする動機を奪うもので、公衆に間違いなく悪影響」と述べました。また、ベストセラー書籍『マンゴー通り、ときどきさよなら』から「質屋に行って、盗まれた持ち物が売られているのを見たようなもの」という一文を引用しました。
アメリカ出版社協会(AAP)のマリア・A・パランテ会長兼CEOは「判決の重要な部分は、行為者が営利か非営利かを問わず、『管理されたデジタル貸与』なる被告の自作自演の理論を裁判所が正面から否定し、書籍を成り立たせるエコシステムは強制力のある著作権法に基づくものであることを示したことです」と述べ、控訴審判決を評価しました。
ニュースサイトのEngadgetは、「インターネットアーカイブが控訴してよかったのは唯一、非営利団体と認められたことです」と述べた上で、音楽業界との裁判も控えていることを指摘しています。
「古いレコードをデジタル化して公開するプロジェクトに著作権を侵害した作品が含まれる」としてソニーやユニバーサルミュージックがインターネット・アーカイブを訴える - GIGAZINE
なお、インターネットアーカイブは「判決には失望しました」との見解を示しました。
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