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30年以上テレビ放送を24時間録画しつづけて7万本のビデオテープに記録した元図書館司書は何をしようとしていたのか?


1929年にアメリカ北東部のペンシルバニア州フィラデルフィアで生まれたマリオン・マーガレット・ストークスは、1940年代から1960年代初頭までFree フィラデルフィア自由図書館で司書として働いた後、公民権運動の活動家を経て、1979年から一日中テレビを録画しつづけることに固執したことで知られています。そんなストークスの人生とストークスが残した記録の重要な意義について、主に歴史に関するトピックを扱うメディアのAll That's Interestingが解説しています。

Marion Stokes, The Archivist Who Recorded 30 Years Of TV
https://allthatsinteresting.com/marion-stokes


プリーシュキン障害とも呼ばれる強迫的な収集癖があったとされるストークスは、1977年から2012年に亡くなるまでの35年間、テレビ番組を24時間欠かさずに録画し続けました。しかし、録画に用いるVHSテープを6時間~8時間おきに交換する必要があったため、レストランで食事する予定があっても、テープ交換に間に合うように素早く切り上げて帰宅したというエピソードも残っています。ストークスが残した録画テープは7万本以上に上り、ストークスの死後は貴重な資料として大量のウェブアーカイブやメディア資料を保存するインターネットアーカイブによってすべてのテープが引き取られました。

ストークスの活動は、マット・ウルフ監督のドキュメンタリー映画「RECORDER: The Marion Stokes Project」に取り上げられています。

30年以上にわたってTVのニュース番組を7万本以上のビデオテープに録画し続けた女性 - GIGAZINE


旧姓マリオン・マーガレット・バトラーは1960年に教師のメルビン・メテリッツと結婚し、マイケルという息子を産みました。その後夫婦は離婚し、テレビの司会者のジョン・ストークス・ジュニアと再婚したことで、マリオン・マーガレット・ストークスという名前に変わりました。ストークス夫妻は1975年頃にビデオテープレコーダーを初めて購入し、当初はお気に入りのシットコムやドキュメンタリー、気になったニュースなどを気軽に録画していたそうです。

しかし、1979年に発生したイランアメリカ大使館人質事件の最中、ストークスは何かが変わったようにテレビの記録に固執するようになりました。息子のマイケル・メテリッツ氏は2019年のドキュメンタリーの中で、「母は、数え切れないほどのテープを購入し、レコーダーで録画を始めたら、一日中テレビをつけっぱなしにして決してやめませんでした」と語っています。

さらに、ストークスは徐々にテレビを買い足していき、一度に複数の番組を録画するようにもなりました。最終的には同じ時間に放送している番組を8台のレコーダーで録画するようになりました。記録済みのテープはいつ崩れてもおかしくないほど積み上げられていき、所有するアパート数軒を次々に占拠していきました。マイケル氏は「まさに物流上の悪夢でした。本当にそうしか言いようがありません」と話しています。以下の画像は、マイケル氏がFast Companyのインタビューに答えた時に提供したストークスのコレクションの一部。


ストークスには強い収集癖があり、テレビ番組だけではなく、日刊紙6紙と月刊誌100~150誌を購読して保管していたり、3万~4万冊の本を集めていたり、おもちゃやドールハウスも大量に所有していたりしました。また、先見の明があったのかコンピュータへの熱意もあり、亡くなるまでにMacを192台収集していて、ストークスはAppleの株投資に成功し、さらに9件のアパートを購入してテープ保管用の倉庫として使っています。

ストークスが強迫的に録画を続けていたのは、「時が経ってニュースが語り直されるにつれ、初期報道で流れた事実や詳細が失われたり、不明瞭になったりするのではないか」という懸念にあったそうです。そのため、当初そのニュースがどのように報道されたのかを記録していくことで、確かな事実を捉えようとしていたのだと考えられています。

ストークスは2012年12月14日に亡くなり、その時点でストークスのテレビアーカイブプロジェクトは終了しました。しかしその1年後には、ストークスのコレクションを引き取ったインターネットアーカイブがすべてのテープをデジタル化してオンラインで公開するプロジェクトをスタートし、新たな段階へと進みました。インターネットアーカイブでテレビ部門を担当するロジャー・マクドナルド氏は、「インターネットアーカイブのテレビ部門チームは、アメリカ全土のテレビニュースをデジタル形式で録画し、すべてを検索可能なアーカイブにすることを目指しています。ストークスの生活は驚くべきもので、コレクションはこれ以上ない貴重な資料です。ストークスのアーカイブ化に対する姿勢と情熱は、英雄的なものでした」と語りました。


マイケル氏によると、ストークスの録画作業は、このデータが役に立つだろうという強い確信にあったそうです。実際にインターネットアーカイブは、ストークスが構想していたようなテレビ番組の索引付け、アーカイブ化、デジタル化を実施しています。マクドナルド氏は「過去のニュースには、永遠に失われてしまうものもあります。しかし、私たちと同じような情熱を持ったマリオン・ストークスのような人が他にもいるかもしれないため、完全に失われてしまっているかどうかはわかりません」と述べています。

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in メモ, Posted by log1e_dh

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