サイエンス

インドの月面探査機が太古の月は「マグマの海」だったことを示す痕跡を発見


原始の地球は、岩石が衝突を繰り返して融解したマグマに覆われた火の玉だったと考えられています。インドの月面探査機「チャンドラヤーン3号」により、過去の月面にも「マグマの海(マグマオーシャン)」が広がっていたことを示す痕跡が発見されました。

Chandrayaan-3 APXS elemental abundance measurements at lunar high latitude | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-024-07870-7

The Moon was once covered by an ocean of molten rock, data from India’s space mission suggests
https://theconversation.com/the-moon-was-once-covered-by-an-ocean-of-molten-rock-data-from-indias-space-mission-suggests-237245

First analysis of soil near the moon's south pole suggests its surface was once covered in molten magma
https://phys.org/news/2024-08-analysis-soil-moon-south-pole.html

インドが2023年7月に打ち上げたチャンドラヤーン3号は、8月に月面への軟着陸を成功させ、着陸船「ビクラム」と探査ローバー「プラギャン」を月の南極付近に繰り出して調査を開始しました。

月面着陸にインドのチャンドラヤーン3号が成功、月の南極に降り立ったのは世界初 - GIGAZINE


インド物理学研究所のSantosh Vadawale氏らの研究チームが、プラギャンに搭載されたアルファ粒子X線分光計で月の南極付近23カ所のレゴリスを分析したところ、付近一帯の元素組成は比較的均一で、すべてのサンプルに鉄に富んだ斜長岩が含まれていることがわかりました。

研究チームによると、月の南極の組成測定値は、アメリカのアポロ16号とソ連のルナ20号が月の赤道付近から持ち帰ったサンプルの中間のものだとのこと。

地理的に離れた地点で採取されたサンプルの化学組成が似ているということは、月がマグマオーシャンに覆われていたという説を裏付けるものです。


この説では、誕生したばかりの地球に火星とほぼ同じ大きさの天体「テイア」が衝突し、宇宙に放出された大量の岩石が集まって月が形成されたことが示唆されます。

ジャイアント・インパクトで宇宙に放出された破片はその後、衝突を繰り返して月となり、月の表面は融解したマグマの海に覆われました。この際、比較的軽い鉄に富む斜長岩が表面付近に浮かび、月の地殻になったと考えられています。


今回の研究では、鉄に富む斜長岩だけでなくマグネシウム鉱物も検出されました。月の地殻の下にあるマグネシウムを多く含む岩石が表層で見つかったのは、付近に巨大な天体が衝突して南極エイトケン盆地ができた際にクレーターから岩石が噴出し、地下深くにあるマグネシウム鉱物が掘り起こされたからだと、研究チームは考えています。

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in サイエンス, Posted by log1l_ks

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