サイエンス

ジム通いしなくても少しの運動で十分な効果が得られる「エクササイズ・スナッキング」とは?


健康のために運動を始めるというと、スポーツウェアを買いそろえてランニングを始めたり、フィットネスジムやスポーツクラブに入会したりしなければならないと思いがちです。一方、専門家はちょうどおやつをつまむような感覚で、ちょっとした運動を1日に何回か行うだけで大きな効果が得られる「エクササイズ・スナッキング」を提唱しています。

Want the health benefits of strength training but not keen on the gym? Try ‘exercise snacking’
https://theconversation.com/want-the-health-benefits-of-strength-training-but-not-keen-on-the-gym-try-exercise-snacking-232374

オーストラリア・ボンド大学の健康科学・医学部研究担当副学部長であるジャスティン・キーオ氏と、ディーキン大学身体活動・栄養研究所の上級講師であるジャクソン・ファイフ氏が提唱している「エクササイズ・スナッキング」とは、器具をほとんど、もしくはまったく使用しない自重トレーニングを1日に数回、1回当たり最短で20秒間程度の短時間だけ行うことを指します。

エクササイズ・スナッキングで行う自重トレーニングとしては、以下のようなものがあります。
・椅子に座って立ち上がること(スクワット)
・片足ずつ前に踏み出し、腰を落としてから立ち上がって元の位置に戻るランジ
・箱の昇降(ボックスステップアップ)
・つま先立ち(カーフ・レイズ)
・腕立て伏せ


これらの運動は、日常生活の中でちょっとずつやることができます。例えば、火にかけた水が沸くのを待つ間にスクワットをしたり、テレビCMが始まった時にランジをしたり、歯を磨きながらつま先立ちを繰り返したりといったやり方です。

もしこれらの自重トレーニングで物足りない場合は、レジスタンスバンドやダンベルを使用するメニューを追加することもできます。

追加メニューの例が以下。各メニューのリンクをクリックすると、キーオ氏らが選んだトレーニング動画をYouTubeで見ることができます。
シーテッドロー
チェストプレスショルダープレス
バイセップ(上腕二頭筋)カール
レッグカール
ニーエクステンション

レジスタンスバンドを使う場合は、動かない物にしっかりと固定されていることを確認し、バンドをしっかり握ってやるのがポイントとのこと。


エクササイズ・スナッキングの効果は、科学的にも検証されています。例えば、筋力トレーニングの経験がない平均年齢75歳の高齢者に、1日2回のエクササイズ・スナッキングを4週間してもらった2019年の研究では、5つの簡単な自重トレーニング(椅子に座って立ち上がる・座った状態で膝を伸ばす、立った状態で膝を曲げる、その場で足踏み、立った状態でふくらはぎを上げる)を1分間ずつ、各運動の間に1分間の休憩をはさんで合計9分間やってもらったところ、立ち上がる能力が31%向上し、脚力と太ももの筋肉の大きさが向上したという結果が得られました。

また、ファイフ氏が筆頭著者を務めた2022年の研究では、エキササイズ・スナッキングの続けやすさや事故リスクが検証されましたが、平均年齢69.8歳の高齢者38人に4週間、1日2~3回、合計1317回エキササイズ・スナッキングをしてもらったところ継続率は100%で、運動が楽しくなかったと答えた人は0人、有害事象は2件しか起きなかったとのこと。その2件も軽微だったので、2人の参加者は負荷を減らしてエキササイズ・スナッキングを継続することができました。

このような軽い運動でも効果が出るのは、座りっぱなしの時間が長くなるのを中断できるからだと考えられています。これまでの研究でも、座りっぱなしの時間が長いことは健康人格に大きな影響を与える一方、少しの運動でその悪影響を相殺できることがわかっています。

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また、特に高齢者の場合は筋力の低下が入院や慢性疾患の悪化に直結するため、筋肉の維持により関節痛の軽減や自立した生活の継続が可能になることが期待されます。

キーオ氏らは「筋力トレーニングの恩恵を得るには、重いダンベルや高価な器具は必要ありません。今日からエキササイズ・スナッキングを始めてみませんか?」と呼びかけました。

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in サイエンス, Posted by log1l_ks

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