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「boy」や「dog」など簡単なのに言語学者を悩ませる由来が不明な単語5選


母親は英語で「mother」で、ドイツ語の「mutter」やラテン語の「māter」と似ています。このような「同根語」、つまり起源を同じくする言葉を用いた比較法により、言語学者は言葉の変遷をたどることができますが、中にはほかの言語に似た単語が存在しない「固有語」もあります。そんな英語の固有語のうち、身近な言葉なのに実はどこから来たのかよくわかっていない言葉を、言語学者のFrancesco Perono Cacciafoco氏が5つ紹介しました。

Five common English words we don’t know the origins of – including ‘boy’ and ‘dog’
https://theconversation.com/five-common-english-words-we-dont-know-the-origins-of-including-boy-and-dog-232299

◆1:Bird(鳥)
Perono Cacciafoco氏によると、「bird」にはゲルマン語派の音の要素がありますが、ほかのゲルマン語派には同根語がないとのこと。古英語では「ひな鳥」を意味する「bridd」のまれな変形としてこの言葉が使われていました。

一方、一般的な鳥は古英語で「fugel」と呼ばれており、この言葉は現代の英語の「fowl(ニワトリなどの家きん類のこと)」に通じています。また、15世紀まで「bird」は鳥だけでなく動物の幼獣全般、さらには魚の稚魚や人間の子どもなどにも使われていたそうです。


◆2:Boy(男の子)
この「boy」がもともと誰のことか、あるいは何のことだったのかは不明です。13世紀には召使いを指す「boie」という言葉があり、それから約1世紀後に男の子を意味する言葉として使われるようになりましたが、この「boie」の由来もわかっていません。

この言葉にはゲルマン語的な響きはありませんが、ではゲルマン人ではなくノルマン人によってイングランドに持ち込まれた言葉なのかというと、それもわからないのだそうです。

一説によると、この言葉は「奴隷」を意味する俗ラテン語の「*imboiare」を源流としており、首輪や家畜用のくびきなどを意味する「boia」といった言葉に関連しているとのこと。なお、「*imboiare」につけられているアスタリスク(*)は、比較法に基づいて再構築された言葉であって、具体的な資料を根拠としているわけではないことを意味しています。

Royal MS 10 E IV f.311v / The British Library

◆3:Girl(女の子)
「girl」の元になった「gyrle」という言葉は、男女の区別なく子どもを意味する言葉として14世紀から使われていた言葉です。「boy」と同様、一見すると単純な単語ですが、この言葉の起源もわかっていません。

学者の中には、古英語で衣服を意味する「gierela」との関連から、「前掛けのような子ども用の衣服が単に子どもを意味するようになった」と推測している人もいます。

また、「girl」は「boy・lass・lad(いずれも若い男性や女性の意)」を含む単語群と同様に、もはや結びつきが失われてしまった別の単語から派生した可能性もあると考える人もいて、学者の間でも見解がわかれています。


◆4:Dog(犬)
「dog」は古英語の「docga」に由来し、これは後に中英語で特定の闘犬用の品種、つまりマスチフを表すのに使われるようになった珍しい言葉です。

もともと古英語では、一般的なゲルマン語の「hund」が犬を表す言葉として使われていましたが、16世紀には「docga」に取って変わられました。現代の英語では、「hund」は猟犬を意味する「hound」となっています。


しかし、肝心の「docga」は由来がわかっておらず、「docga」と関係がある古英語もありません。Perono Cacciafoco氏は、この言葉で呼ばれていた犬種が犬そのものを代表するほど一般的になったのではないかと考えていますが、これも推論の域を出ていません。

まったく手がかりがない「dog」を、Perono Cacciafoco氏は「英語の語彙論における真の謎」と形容しました。


英語には、ほかにも「pig(豚)」「hog(豚)」「stag(雄鹿)」など、由来がわからない動物関連の言葉がいくつかあります。また、スペイン語で犬を意味する「perro」も、起源が不明な言葉のひとつです。

◆5:Recorder(リコーダー/縦笛)
「recorder」はこれまでの4つとは少し事情が異なり、「繰り返す」や「思い出す」などを意味する中世フランス語の動詞「recorder」、ひいてはラテン語の「recordari」を由来とすることがわかっています。

では何が謎なのかというと、なぜこの言葉が録音機ではなく縦笛の一種、つまりリコーダーを意味するようになったのかという点です。イタリア語でリコーダーは「flauto dolce」、フランス語では「flûte à bec」、ドイツ語では「blockflöte」と呼ばれており、いずれもフルートに類する言葉が使われています。


リコーダーが最初に文献に登場するのは、1388年に作成されたイングランド王が所有する楽器のリストです。

このラテン語のリストには、リコーダーが「i. fistula nomine Recordour(Recordourというパイプ)」と、固有名詞のように大文字の頭文字で書かれていました。これに対し、15世紀のイギリスでは街の主任法務官が頭文字が小文字の「recordour」で表記されていたことがわかっています。

「recorder」が笛を意味するようになった経緯については諸説あり、その中には音色と鳥の鳴き声の連想によるものだという説があります。確かに、鳥の鳴き声は反復的で「record」された、つまり繰り返された音が聞こえますが、この説明には少し無理があるとPerono Cacciafoco氏は考えています。

言語学者として「ocarina(オカリナ)」や「gemshorn(ゲムスホルン:水牛の角で作られたオカリナのような笛)」の語源を考察してきたPerono Cacciafoco氏の次なるテーマこそが、このリコーダーです。

Perono Cacciafoco氏は「これらの固有語の起源にまつわる物語を再構築できれば、私たちの祖先や彼らの考え方、そして身の回りの物事にどのような名前を付けるかという『認知戦略』について多くの事がわかるようになるかもしれません」と述べました。

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in メモ, Posted by log1l_ks

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