「アルゴリズム」という言葉の由来は?
アルゴリズムという言葉はGoogle検索やSNSでの分析や、特定のタスクを実行して処理するプログラム、人工知能の開発などで私たちの生活に不可欠です。だれもが聞いたことある「アルゴリズム(Algorithm)」というワードがどこから来たのかという由来と歴史について、メルボルン大学でデジタルヘルスの研究員を務めるデビー・パッシー氏が解説しています。
Why are algorithms called algorithms? A brief history of the Persian polymath you’ve likely never heard of
https://theconversation.com/why-are-algorithms-called-algorithms-a-brief-history-of-the-persian-polymath-youve-likely-never-heard-of-229286
アルゴリズムの概念は、9世紀のペルシアで活躍した科学者のムハンマド・イブン・ムーサー・アル・フワーリズミーが発明したと考えられています。アル・フワーリズミーは西暦780年から850年まで生きたイスラム科学の学者で、「代数学の父」または「コンピューターサイエンスの祖父」とも呼ばれることがあります。彼が生きた時代はイスラム帝国における科学の目覚ましい進歩が見られたイスラーム黄金時代の初期で、アル・フワーリズミー自身も古典的な地図作成本を修正したり、太陽・月・惑星の動きを追跡するための計算を作成したりと、数学や地理学、天文学、三角法に重要な貢献をしました。
特にアル・フワーリズミーの功績として有名なのが代数の開発です。当時のイスラム数学者は代数の開発を主要プロジェクトとして取り組んでおり、イスラム国家の最高権威者であるアッバース朝第7代カリフのマアムーンはアル・フワーリズミーに対し、代数に関する論文「アル=ジャブル」を書くよう勧めました。代数の概念自体は当時より何百年も前から存在していたものの、代数に関する決定的な本を書いたのはアル・フワーリズミーが初めて。パッシー氏によると、この本がラテン語翻訳されたものは、16世紀までヨーロッパの代数教科書の基礎となっていたそうです。
また、アル・フワーリズミーの重要な数学的貢献としては、西洋の数学者にヒンドゥー教アラビア数字を紹介したことにあるとのこと。ヒンドゥー教アラビア数字とは「0~9」の数字記号で、ゼロと10進法を使用する点でコンピューティングの歴史にとっても重要な数値体系です。アル・フワーリズミーの数学的問題を計算する技術は、アルゴリズムの概念の基礎を築きました。
アル・フワーリズミーのヒンドゥー数字に関する本はラテン語に翻訳されて「Algoritmi de numero Indorum(アルゴリトミのインド数字)」というタイトルになりました。そこから、ヒンドゥー・アラビア数字体系を使用して算術するための規則のことを、アル・フワーリズミーにちなんだ中世のラテン語で「アルゴリズム(Algorithm)」と呼ぶようになったというわけ。
アルゴリズムというワードが「演算の繰り返しを頻繁に伴う、有限数のステップで数学的問題を解く手順」または「問題を解決したり、何らかの目的を達成したりするための段階的な手順」という現在の定義になったのは、これらの概念が提案・証明された20世紀初頭のこと。有名なものでは、「コンピュータ科学の父」と呼ばれるアラン・チューリングが提案したチューリングマシンがあります。チューリングマシンは実際の機械ではなく抽象理論ですが、まさしく現在のアルゴリズムを実際的に取り扱った計算モデルで、コンピュータの誕生に重要な役割を果たしました。
アルゴリズムの概念の元となったアル・フワーリズミーは、今日よく知られている数学およびコンピュータサイエンスの発展において中心的な役割を果たしました。パッシー氏は「SNSからオンライン銀行口座の使用、Spotifyで音楽を聞く時間に至るまで、デジタルテクノロジーを使用するときは、古代ペルシャの科学者の先駆的な業績がなければ、どれもが不可能であることを思い出してください」と語っています。
・関連記事
最初に「プログラミング言語」という言葉が使われ始めたのは一体いつなのか? - GIGAZINE
データベース用語の「シャーディング」はMMORPGの「ウルティマオンライン」が由来かもしれない - GIGAZINE
ゲームの「ナーフ(弱化)」や「バフ(強化)」という言葉はいつから使われるようになったのか? - GIGAZINE
なぜ英語で「child」の複数形は「childs」ではなく「children」なのか? - GIGAZINE
日本は「日出ずる処」など世界のさまざまな国名の由来が一目でわかる世界地図 - GIGAZINE
・関連コンテンツ