メモ

なぜ1分は60秒で1時間が60分なのに、1日は24時間なのか?

By Christina B Castro

1日は24時間で表すことができ、1時間は60分、1分は60秒で表すことができます。日々の生活に完全に溶け込んでいるこれらの数字の起源は一体どこから来たものなのでしょうか?Scientific Americanが計測学者やアメリカ国立標準技術研究所などから論拠をとりながら、これらの起源についてまとめています。

Why is a minute divided into 60 seconds, an hour into 60 minutes, yet there are only 24 hours in a day?: Scientific American
http://www.scientificamerican.com/article.cfm?id=experts-time-division-days-hours-minutes


現在世界で最も使用されているであろう記数法は十進法で、これは人間の指で数をかぞえるには「10」という数字が最適だったため出来上がったものだろう、と考えられています。

By Kevin Harber

古代エジプト人が日時計を使用していたことは文書で残されているので、ほとんどの歴史家は彼らが1日を「いくつかの時間ごとに分割」した歴史上で初めての文明であるとしています。最初の日時計は、地面に挿しさった棒の影が示す方向や長さで時間を示すというものだったそうですが、紀元前1500年頃にはさらに高度な日時計が発明されます。その日時計はT字型の棒を地面に挿し、日の出から日没までにできる影が動く範囲を、12個に分割する時計でした。この「12」という数字はエジプトで使われていた十二進法からきたものではないかと考えられています。

By Jim Mead

ちなみに、十二進法の起源は「太陰周期での1年が12か月であること」もしくは「親指以外の指の関節の数が12個であること」のいずれかであると考えられているようです。

By Markus Grossalber

そんな日時計により、現在我々が「1時間、2時間」などと呼ぶ、1日をいくつかの時間に分割する考え方が誕生したわけです。12に分けられた日中の時間はほとんど同じような長さに感じられますが、1年を通してみると、夏は日が長く、冬は反対に短いのでその時間には時期ごとに大きく差が出ています。つまり「12に分割された『時間』の長さが、季節や月ごとに異なる」ものだったわけです。

その頃から既に「日中」と日没後の「夜」という相反する印象を持った時間は1つのセットとして考えられており、これらをまとめて「1日」という概念ができたようですが、当時の人々にとって日時計の助けなしで「夜」を細かい時間に区切ることは非常に難しいことだったので、1日が最初から24時間に分割されていた、というわけではない模様。

By Eifion

しかし最初に日時計が使われた時代に、エジプトの天文学者は天空に円を描くように等間隔で並ぶ36個の星を観測し、「『夜』はこれらの星の内18個を見て細かい時間に分割できるのでは?」と考え、それらの内3つの星を地上から見えにくい星2つと同じものとし、「夜」を12分割したとのことです。そしてこの時間の分割方法は、エジプト新王国時代になり、24個の星の内12個が夜の間に通過する、といった風により単純化され、さらに古代では最も正確に時間を計測できたであろう水時計などを使用することでより正確に「夜」の時間を分割できるようになっていきます。カルナックのアモン寺院で見つかった水時計の標本は紀元前1400年くらいのものであり、これは水圧を減らすために内部表面が傾斜しているのですが、その内側には「夜」を12分割するための目盛りがふってあったとのこと。さらにこの水時計は各月ごとに異なる位置に目盛りがふられていたようで、日中の時間が各月ごとに微妙に異なることを考慮したものが遙か昔から存在していたことが分かっています。

こうして「日中」と「夜」がそれぞれ12の時間に分割されるようになったことで、1日が24の時間に分けられるようになったわけです。

By Joseph Dsilva

1日が24の時間に分割されるようになってから何世紀もの間、1時間の長さは季節や日中と夜の時間によってバラバラのままでした。しかし、1時間の長さが同じように1日を均等に24分割する方法が、ヘレニズムの時代に生まれます。紀元前147年から127年にかけて活躍したギリシャの天文学者であるヒッパルコスは、1日を「昼夜平等に24分割する」という考えを提唱。この考えは昼と夜の長さがほぼ等しくなる時期(春分の日や秋分の日)の昼間の時間がベースになっています。しかし、1時間ごとの長さがほぼ同じになるよう1日を分割したにも関わらず、その後数世紀に渡り、一般人の間ではそれまで通り季節ごとに1時間の長さが異なる方法で1日を分割していたとのこと。なお、1日を均等に分割する方法が普通に使用されるようになったのは、機械時計が出てくる14世紀ごろのようです。

ヒッパルコスやその他のギリシャ人天文学者は、バビロニア人がシュメール人から継承した六十進法を天文学に応用して時間の区分をより細かいものにしていきます。この六十進法がなぜ「60」という数字をとるのかは不明のままですが、「60」は10・12・15・20・30といった数字で割り切れる最も小さな数字なので、分数では非常に便利な数字。現在一般的な計算で使われることはまれな六十進法ですが、いまだに角度・地理座標・時間を計測する際に使用されているのも事実です。

By Ruddington Photos

紀元前276年から194年頃のギリシャ人天文学者エラトステネスは、地理学における緯度を開発するために円を60分割しました。その1世紀後に、ヒッパルコスが地球の形状に沿って平行に緯度を引くことでこれを標準化し、さらにそこに経度という概念を加えることで地球全体を経線と緯線で包み、360分割するという方法を考案します。これにより、地球は経線により24のセグメントに区切られ、1セグメントが1時間を表すといった具合になります。その後西暦150年頃になり、アルマゲストの著者であるクラウディオス・プトレマイオスがヒッパルコスの地球を小さく分割する方法を応用し、360に分割されたセグメントをさらに60分割することで、「分」として知られている時間の単位が誕生。さらにこれを60分割して「秒」も生み出します。しかし、「分」や「秒」といった時間の単位がまともに使われるようになるのはそこから10何世紀もあとの話だったようです。なぜならこの1時間を60分で表す、という考え方は一般大衆にとって全く実用的なものではなかったようで、「分」まで表示する初めの機械時計が誕生する16世紀の終わり頃までは、あまり理解されない時間単位だったとScientific Americanは記述しています。これは、現在の時計でさえ「分」を表す目盛りまでしか持っていないものも多いのに、細かい時間の分割単位を示されても古代の人々にはそれを知る術がなかったためのようです。

By Alex Brown

古代文明の研鑽が現在の時間の分割方法を確立するために大きな役割を担ってきたことは明らかですが、現代の時間計測技術の進歩により、時間に関する定義が変更されたこともあります。1967年の国際度量衡総会の決議により「1秒は、セシウム133原子の基底状態の2つの超微細準位の間の遷移に対応する放射の、91億9263万1770周期の継続時間である」と再定義されでいます。興味深いことに、原子時計でより正確になった現代の時間も地球の自転に基づく時間とは若干のズレが生じるため、このズレを埋めるためにうるう秒が加えられることがあるという点。このズレにより10年に8回程度の割合で1分は61秒になっていることがあるとのことです。

By Andy Mangold

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in メモ,   ピックアップ, Posted by logu_ii

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