人間以外の動物も「言語」を持っているのか?

by Shannon Kokoska

人間が誕生してから数百万年以上が経過した現在、人間はこれまでの生物が持つことのなかった高度な文明を持つようになりました。人間が技術を発展させる上で欠かせないツールの1つに、ある個体から別の個体へ的確に情報を伝達する「言語」がありますが、「人間以外の動物は言語を持っているのか?」という疑問について説明したムービーがYouTubeで公開されています。

Do animals have language? - Michele Bishop


コミュニケーションを取らない動物は存在しません。


カニはハサミを振り上げて「自分は健康体だ」と合図することで、交尾する相手を探します。


イカは皮膚細胞の色素胞を変化させることで、皮膚の模様を変えて周囲の環境に擬態したり……


敵を威嚇したりします。


ミツバチはダンスを踊ることで、ミツのある場所やミツの量を仲間のハチに伝えます。


このように優れたコミュニケーションを持った動物が自然界には存在しますが、果たして動物は「言語」を持っているのでしょうか?


言語には4つの性質があります。


「DISCRETENESS(分離性)」


「GRAMMAR(文法)」


「PRODUCTIVITY(生産性)」


「DISPLACEMENT(超越性)」の4つです。


「分離性」とは、「言語が個々の音や単語を持っており、これらが組み合わさることで言語が新しい意味を持つ」という性質を指します。


冷蔵庫の扉に貼り付けられたアルファベットのマグネットと同じで、同じ音や単語を使っていても並び方が代わることで、違った文章になるのです。


「文法」とは、それらの音や単語がどのように並ぶのかを定めたルールです。


「生産性」とは、言語を使って無数の表現を行う能力のこと。


「超越性」とは、言語を使って「目の前で起きていない出来事」について話す能力。たとえば、過去・未来・架空の話などについて話すことは、言語の「超越性」という性質に分類されます。


動物が行うコミュニケーションには、言語が持つこれらの性質があるのでしょうか?


カニやイカに関しては「NO」です。


カニやイカが使う信号には「分離性」がないため、複数の信号を組み合わせて創造的な情報を発することはありません。


また、それらの信号には「文法」も存在せず、過去や未来について話すこともないとのこと。


「私は健康体です」「私には毒があります」といった情報は、まさにたった今、「現在」を示すものです。


しかし、言語が持つ性質のうち、いくつかを持った動物も存在します。


ミツバチのダンスは位置・角度・タイミング・動き方などによって、ミツのある場所や量を表します。


このとき、ミツバチが伝えたいミツのある場所は巣の外にあるため、「目の前にあるもの」以外について話していることになり、「超越性」の性質を示しています。


プレーリードッグが持つコミュニケーションツールも、ミツバチのダンスと似た傾向を持っています。


何千匹単位の群れで暮らすプレーリードッグには、コヨーテやタカ、アナグマ……


ヘビに人間といった多くの外敵が存在します。


彼らは外敵の襲来を仲間に知らせるとき、「敵が来た」ということ以外にも敵の大きさや姿、スピードを伝える上に……


敵が人間の場合は、服装や銃を持っているかどうかまで伝えられるとのこと。


チンパンジーやゴリラのような大型類人猿も発達したコミュニケーションを行うことが可能で、手話のような仕草でコミュニケーションする個体もいます。


ワショー」というチンパンジーはアメリカ手話を習得して独自の文章を作成することができました。


ココ」というメスのゴリラは1000以上の手話と、飼育員が話す2000以上の口語英語を理解することができたとのこと。


ココは「ボール」という名前のネコをかわいがっていて、ボールが死んだあとにボールへの愛情を手話で表現するなど、ココの手話は「超越性」を示していました。


ですが、チンパンジーやゴリラなどであっても自然界ではこれらの言語的性質を見ることができません。ワショーやココなどの個体は自然に手話を習得したのではなく、あくまでも人間によって手話を教えられたから手話を使えるようになったわけ。


イルカもまた、複雑なコミュニケーションを行う動物です。


イルカたちは口笛で名前・年齢・場所・性別などを伝えることができます。


イルカは研究者が使う身振りを理解するため、文法も習得できると言えます。


しかし、やはりゴリラやチンパンジーと同じく、自然界のイルカが行うコミュニケーションには文法がありません。


これらのコミュニケーションには、ある程度言語の性質が備わっているものの、「分離性」「文法」「生産性」「超越性」といった4つの性質がすべてそろっているわけではないのです。


ココやワショーの示す言語能力でさえ、人間の3歳児が持つ言語能力よりも下なのです。


動物がコミュニケーションする情報にも限りがあります。


ミツバチはミツの話。


プレーリードッグは敵の話。


カニは自分のことしか話しません。


人間の持つ言語のみが、「文法」と「生産性」に深く結びついており……


「分離性」と「超越性」によって特異なものになっているのです。


人間の脳は言語が持つ限られた要素から、無限のメッセージを作り出すことが可能。


それどころか、それまで誰もしゃべったことのない新しい単語を作り出すことも、それを理解することもできます。


私たちは言語によって数限りないテーマについて語り合うことができ……


空想の物語だって生み出せます。


もちろん、真っ赤なうそだってつけるのです。


これから進められる研究により、私たちは動物が持つコミュニケーションについてさらに深く知ることができるはず。


動物が持つコミュニケーションツールと人間が持つ言語とは、決して非連続的なものではなく、なだらかにつながった連続的なものであるはずです。


そういう意味では、「人間もまた動物である」と言えるかもしれません。

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