Googleが独占禁止法訴訟における陪審裁判の回避目的でアメリカ司法省に損害賠償を支払うことを認める
Googleは2023年1月24日に提起された「反競争的で排他的かつ違法な行為を通じて、デジタル広告技術における優位性を追求した」と主張するアメリカ司法省からの反トラスト訴訟に直面しています。2024年5月20日にGoogleがこの訴訟における陪審裁判を回避するため、司法省に対して損害賠償を支払う姿勢を示しました。
gov.uscourts.vaed.533508.630.0.pdf
(PDFファイル)https://storage.courtlistener.com/recap/gov.uscourts.vaed.533508/gov.uscourts.vaed.533508.630.0.pdf
Google cuts mystery check to US in bid to sidestep jury trial | Reuters
https://www.reuters.com/legal/government/google-cuts-mystery-check-us-bid-sidestep-jury-trial-2024-05-20/
アメリカ司法省は2023年1月24日に、Googleが広告技術における競争を阻害しているとの主張で、バージニア州などの州でGoogleに対する訴訟を提起していました。
Googleが広告市場での反トラスト法違反で提訴される、Googleは「巨大な競争市場が無視されている」と反論 - GIGAZINE
Googleはこの主張に対し「買収取引が規制当局によって承認されて以来、広告市場での競争は激しさを増してきました」「政府は競争の激しい業界での勝者と敗者を決めるべきではありません」と反論し、疑惑を否定しています。
一方でGoogleは陪審裁判を回避することを目的に、司法省に対して「訴訟に関連する金銭的損害を補います」と主張する小切手を書き、損害賠償を支払いました。Googleは「先んじて損害賠償が支払われてしまったこのような状況では、陪審裁判を行う権利がなくなるはずです」と述べています。なお、Googleは損害賠償の支払いを認めたものの、その金額については明らかにしていません。
Googleによると、数カ月にわたる司法省の調査の結果、徴収される可能性のある損害賠償額の概算は100万ドル(約1億5000万円)に満たなかったとのこと。つまり、豊富な資金を持つGoogleは徴収に先んじて司法省に損害賠償を支払っておくことで、裁判における論争の価値をなくし、結果として陪審裁判を回避しようとしているというわけです。
加えてGoogleは「今回の裁判は高度に専門的で、一般市民から選出されるほとんどの陪審員候補者の日常的な知識の範囲外です」と述べています。
しかし、スタンフォード大学ロースクールのマーク・レムリー教授は「陪審員らは最終的にGoogleが司法省に支払ったものよりも高い損害賠償を請求する可能性があります」と述べ、Googleの策略に懐疑的な意見を示しました。
一方でペンシルベニア大学ロースクールのハーバート・ホーフェンカンプ氏は「Googleの行動は賢明です」と語っています。
Google's move is smart, and calculated to produce a better outcome. Juries are bad at deciding technical cases, and further they do not have the authority to order a breakup. The "law" (damages) and "equity" parts of the case are best separated; this motion facilitates that. https://t.co/Il3YoLjJuf
— Herbert hovenkamp (@Sherman1890) May 17, 2024
なお、司法省はGoogleからの損害賠償の支払いを受け入れるかどうかについて明らかにしていません。
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