Googleが日本で独占禁止法違反の疑いのある行為を7年間行っていたが自主的に是正の計画を提出することで課徴金を回避
Googleがヤフー(現LINEヤフー株式会社)に対し検索エンジン及び検索連動型広告に必要な一部の技術を提供せず独占禁止法違反の疑いが持たれていた問題に対し、是正の計画を公正取引委員会に提出しました。公正取引委員会はこの計画が適切なものであることを認め、調査を停止しました。
(令和6年4月22日)Google LLCから申請があった確約計画の認定について | 公正取引委員会
https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2024/apr/240422_digijyo.html
Google gets a warning from Japan's FTC after blocking Yahoo! • The Register
https://www.theregister.com/2024/04/22/google_yahoo_japan/
Japan's anti-monopoly body orders Google to fix ad search limits affecting Yahoo - Japan Today
https://japantoday.com/category/tech/japan%27s-anti-monopoly-body-orders-google-to-fix-ad-search-limits-affecting-yahoo
FTC takes action against Google over search ad deal with Yahoo | The Asahi Shimbun: Breaking News, Japan News and Analysis
https://www.asahi.com/ajw/articles/15241468
Google (NASDAQ:GOOGL) Accused of Anti-Competitive Practices in Japan - TipRanks.com
https://www.tipranks.com/news/google-nasdaqgoogl-accused-of-anti-competitive-practices-in-japan
Japan FTC to give Google chance to voluntary resolve dispute with Yahoo Japan - UPI.com
https://www.upi.com/Top_News/World-News/2024/04/22/8871713790026/
Google pressed to reform search ad practices in Japan - The Mainichi
https://mainichi.jp/english/articles/20240422/p2g/00m/0bu/030000c
Japan Watchdog Says Google Hurt Local Rival’s Ability to Compete - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2024-04-22/japan-watchdog-says-google-hurt-local-rival-s-ability-to-compete
今回問題となっていたのはウェブサイトの運営者が広告枠を検索連動型広告配信業者に提供する代わりに広告料の一部を受け取る取引である「モバイル・シンジケーション取引」です。Googleやヤフーなどの検索連動型広告配信業者はユーザーの検索クエリを元に関連する広告を選択してウェブサイトの広告枠に配信し、ユーザーのタップに応じて広告主から広告料を受け取ってその一部をウェブサイトに分配します。
かつてヤフーはアメリカのヤフーが開発した検索エンジンおよび検索連動型広告の技術を使用していましたが、2009年にアメリカのヤフーが検索エンジンおよび検索連動型広告技術の開発を停止したため、代わりにGoogleから技術の提供を受けることになりました。2社は技術提供開始の前に独占禁止法上の問題がないかを公正取引委員会に確認しており、「技術提供後もインターネット検索サービス及び検索連動型広告の運営をそれぞれ独自に行い、広告主、広告主の入札価格等の情報を完全に分離して保持することで、引き続き競争関係を維持する」と説明することで公正取引委員会から「問題ない」という回答を引き出しています。
2010年(平成22年)より実際に技術の提供が開始されましたが、2014年にGoogleは契約を変更し、2015年(平成27年)から2022年(令和4年)までの7年にわたり、モバイル・シンジケーション取引に必要な技術を提供しませんでした。そのため、ヤフーはモバイル・シンジケーション取引の分野においてGoogleと競争することができなくなり、この行為が私的独占など独占禁止法違反に該当する可能性があるとして公正取引委員会が調査を行っていました。
独占禁止法違反の調査においては、通常手続きの場合は証拠が集まってから意見聴取手続を経て排除措置命令や課徴金納付命令へと進みますが、今回の問題では事業者と公正取引委員会の合意により自主的に違反の疑いを解決する手続きである「確約手続」が採用されました。
確約手続は競争上の問題を早期に是正するための手続きで、公正取引委員会は「独占禁止法違反の疑い」の時点で行為の概要や法令の条項を通知し、それに対して事業者が是正のための「確約計画」を作成・申請します。その確約計画が実行されて独占禁止法違反の疑いのある行為が排除されることが確実であると見込まれた場合、公正取引委員会はその確約計画を「認定」します。
確約手続において確約計画が認定された場合、排除措置命令や課徴金納付命令は行われません。今回の公正取引委員会による発表は「Googleの確約計画を認定する」というものであるため、Googleには排除措置命令や課徴金納付命令が発せられないこととなります。今回の発表を報道したThe Registerは「7年以上にわたりヤフーをブロックしてきたGoogleにとって、この結果は悪い取引ではない」と述べています。
確約計画によると、今後3年間に渡ってGoogleはヤフーにモバイル・シンジケーション取引関連技術の提供を制限しないとのこと。履行の状況については毎年公正取引委員会に報告すると述べられています。
・関連記事
Googleは独占禁止法違反を隠すために「市場シェア」「囲い込み」「ネットワーク効果」などの発言を禁止するよう教育していた - GIGAZINE
Googleが検索エンジン市場において独占禁止法に違反しているかどうかを巡る裁判がスタート - GIGAZINE
アルゴリズムによる価格操作が独占禁止法に違反している場合があるとFTCが警告 - GIGAZINE
GoogleとAppleの検索契約が独占禁止法に違反しているというGoogleユーザーからの集団訴訟を裁判所が棄却 - GIGAZINE
Googleがインドで独占禁止法違反の調査対象に、理由は「開発者に課す手数料が高すぎる」 - GIGAZINE
・関連コンテンツ