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MicrosoftによるOpenAIへの巨額の投資は「GoogleのAI研究が進み過ぎている」という懸念がきっかけだったことが明らかに


Microsoftは2019年にOpenAIに10億ドル(約1560億円)を投資。2020年9月にはOpenAIの大規模言語モデル(LLM)であるGPT-3の独占ライセンスをMicrosoftが取得。さらに2023年1月には、MicrosoftがOpenAIに数十億ドル(数千億円)規模の出資を行い長期的なパートナーシップを結びました。年々関係を深めるMicrosoftとOpenAIですが、その始まりとなった「2019年の10億ドルの投資」は、GoogleによるAI分野への取り組みがMicrosoftの何年も先を行っていることを危惧して行われたものであったことが明らかになりました。

Microsoft’s OpenAI investment was triggered by Google fears, emails reveal - The Verge
https://www.theverge.com/2024/5/1/24146302/microsoft-openai-investment-google-worries-internal-emails


Email Microsoft didn’t want seen reveals rushed decision to invest in
OpenAI | Ars Technica

https://arstechnica.com/tech-policy/2024/05/email-microsoft-didnt-want-seen-reveals-rushed-decision-to-invest-in-openai/

アメリカ司法省によるGoogleに対する独占禁止法違反訴訟の資料として、Microsoftは2019年6月に社内で交わされたメールを公開しています。このメールは「OpenAIについての考え」という件名で、Microsoftのケビン・スコットCTO、サティア・ナデラCEO、共同創設者のひとりであるビル・ゲイツ氏の3人が当時のAI分野に関する議論を繰り広げたものです。

スコットCTOは2019年6月12日に、ナデラCEOとゲイツ氏に宛てたメールの中で「機械学習の規模という点で、我々は競合他社(Google)よりも数年遅れています」と言及。さらに、スコットCTOはMicrosoftのエンジニアがGoogleの言語モデルであるBERTを複製してトレーニングするのに6カ月かかったことを、詳細に説明しています。スコットCTOいわくMicrosoftが同分野でこれだけ大きな後れを取っていた理由は「インフラストラクチャーがその任務に対応していなかったから」だそうです。

さらに、OpenAIとGoogle DeepMindが「どちらが最も印象的なゲームプレイAIを構築できるか」を競っていた時に、「MicrosoftはAI分野への取り組みを軽視していた」とスコットCTOは述べています。AI分野の研究は、2018年頃はAIにゲームをプレイさせることに注力しており、この時MicrosoftはAI研究に強い関心を示していなかったものの、その後、AIを用いた自然言語処理にシフトしていくにつれMicrosoftのAI分野への関心は深まっていったというわけです。スコットCTOは「AIモデルのトレーニングに関して、Googleと我々の間には大きなギャップがあることを理解し、非常に心配になりました」と、率直な感想をメールで送信しています。

また、スコットCTOは「Googleの初期AIモデルのいくつかは、Bingとの競争における優位性を築くために役立った」とも言及。加えて、これらのAI研究の成果としてGoogleのメールサービスであるGmailのオートコンプリート機能が「恐ろしく良くなっている」と称賛しています。


これに対して、ナデラCEOはMicrosoftのエイミー・フッドCFOに「私がこれをやりたい理由」という件名で、スコットCTOのメールを転送しており、スコットCTOの訴えるAI分野への投資に賛同したことが伺えます。フッドCFOはMicrosoftの上級幹部チームの主要メンバーで、同社の財務目標を監督し、支出を定期的に抑制する役割を担っている人物です。

ゲイツ氏は2020年に従業員との不倫騒動を受けMicrosoftの取締役を辞任していますが、それ以降もMicrosoftとOpenAIの協力関係において継続的に重要な役割を果たしてきたことがこれまでの報道で明らかになっています。今回公開された「2019年6月当時のメール」からは議論が誰から始められたのかはわかりません。しかし、Business Insiderはゲイツ氏が2016年からOpenAIと定期的に会合を持ち、取引の仲介を行っていたと報じています

その後のMicrosoftとOpenAIの協力関係は既知の通りで、OpenAIのAIはMicrosoftのOfficeアプリやBing、Edge、Windowsに至るまでさまざまなプロダクトに統合されるに至りました。これにより、2019年時点で懸念されていたようなAI分野での遅れを一気に取り戻し、AI分野における業界のリーダーとして見られるようになっています。


なお、OpenAIはMicrosoftと協力してAIスーパーコンピューターの「Stargate」を含む、1000億ドル(約15兆6000億円)規模のデータセンタープロジェクトの計画に取り組んでいるとも報じられており、両社の協力関係は今後もより深いものになっていくことが予想されています。

MicrosoftとOpenAIがAIスパコン「Stargate」を含む15兆円超のデータセンタープロジェクトを計画中との報道 - GIGAZINE


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in ソフトウェア, Posted by logu_ii

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