サイエンス

牛の健康のために磁石を飲ませる「牛マグネット」が推奨されている


磁石の誤飲は内臓の損傷につながることもあり、場合によっては手術が必要になることもあります。ところが、家畜の牛では磁石を飲ませることが健康のために推奨されています。

牛における消化管内異物の分類
(PDFファイル)https://www.pref.tottori.lg.jp/secure/831113/16.pdf

創傷性胃炎などの予防に対する永久棒状磁石の応用とその引上げ方法について
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jvma1951/16/12/16_12_449/_article/-char/ja

育成牛の第二胃内鋭性金属異物に対するマグネットの効果
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jvma1951/48/12/48_12_941/_article/-char/ja

「牛マグネット」その1|永久磁石の製造販売-マグナ
https://www.magna-tokyo.com/outtech/support/blog/no1

牛はエサを食べる際にほとんどかまずに飲み込む習性があります。さらに、牛は好奇心旺盛で牛舎のあちこちをなめたり、落ちているものを飲み込んだりするとのこと。このためエサに紛れたクギやネジなどの金属片も飲み込んでしまいます。倉吉家畜保健衛生所が2014年~2016年にかけて実施した調査では、異物を飲み込んでいた牛18頭のうち67%で消化管内から金属片が見つかりました。


牛が飲み込んだ金属は排出されず、第2胃(ハチノス)にとどまり、胃の収縮や運動によって金属片が胃に穴を開けることもあります。この金属片による胃の損傷を防ぐために考案されたのが、「牛に磁石を飲ませて、胃の中の金属を磁石にくっつける」という方法です。牛に飲ませる磁石は「牛マグネット」「パーネット」といった名前で呼ばれており、多くの畜産家が牛に磁石を飲ませています。実際に牛に磁石を飲ませる様子は以下のムービーで確認できます。

BOVIVET Ruminal Magnets - YouTube


牛に磁石を飲ませる予防法は日本でも推奨されており、京都府丹後家畜保健衛生所は以下のようなパンフレットを作成して磁石を用いた予防を呼びかけています。

創傷性胃炎予防に永久磁石を飲ませましょう | 京都府丹後家畜保健衛生所
(PDFファイル)https://www.pref.kyoto.jp/tango-kaho/documents/h29n022.pdf


磁石を飲ませることは、胃の損傷の予防だけでなく改善にも効果があります。例えば、帯広畜産大学が1995年に発表した研究論文では「金属片で胃が損傷した牛に磁石を飲ませた結果、増体量が改善した」ということが報告されています。

また、磁石の形状や構成の工夫も進んでいます。例えば、磁石メーカーのマグナが開発した牛マグネット「リューマックス21」(写真上)は磁石の配置を工夫することで従来の磁石(写真下)より金属片の突出を抑えることに成功しています。

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1o_hf

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