「子どもがケガをする危険がある」と非難された球状の磁石「Zen Magnets」が6年にもわたる法廷闘争に勝利

by Doruk Kaynak

強力な磁力を持つ小さな球状の磁石「Zen Magnets」を販売するZen Magnetsは、「米国消費者製品安全委員会(USCPSC)との6年にもわたる戦いに勝利した」と公式ホームページで宣言しています。

6/2018: 6 Years of Battle Ends In Victory | Zen Magnets
https://zenmagnets.com/public-releases/6-2018-6-years-of-battle-ends-in-victory/

Zen Magnetsが販売していた「Zen Magnets」は強力なネオジム磁石を小さな球状にした「マグネットボール」の一種で、小さな球形磁石を自由に組み替えて遊ぶことのできるマグネットボールはアメリカで大きな人気を誇るおもちゃでした。マグネットボールで遊んでいるムービーはYouTubeでたくさん公開されており、たとえば以下のムービーのようにいくつものマグネットボールを組み合わせて、幾何学的な立体を作ることなどが可能です。

Tutorial: Quintuple Icosahedron (Zen Magnets)


多くの人が遊んでいたマグネットボールでしたが、2009年以降「子どもがマグネットボールを複数個誤飲してしまい、強力な磁力を持つマグネットボールが体内でお互いにくっつこうとした結果、胃や腸の壁を貫通してしまう」という事故が起きていたことが判明。2012年には、USCPSCにより「マグネットボールは全製品をリコールしなければならない」という命令が下されました。

BuckyballsやMagnicubeといったマグネットボールを製造するいくつかの企業は、命令に反対してリコールを拒否する姿勢を見せました。しかし、マグネットボールのリコールを進めたいUSCPSCは政治を巻き込んだキャンペーンを行い、約2年間にわたって法廷で争ったBuckyballsとMagnicubのいずれもが、2014年に命令を受け入れて倒産してしまったそうです。

Zen MagnetsのCEOであるShihan Qu氏は、従業員を削減して極限まで会社を存続させる努力を重ね、USCPSCのリコールに反対して法廷で争う姿勢を崩しませんでした。2015年には、USCPSCがマグネットボールに関して「子どもが飲み込むには大きすぎるか、磁力を従来のマグネットボールと比較して50分の1まで弱くしなければならない」という新基準を策定し、製品の販売が不可能になったZen Magnetsの収益がゼロになるという事態にも追い込まれたとのこと。

by Sheila Sund

2016年、ようやく裁判所が「USCPSCの新基準には不備がある」として、Zen Magnetsの主張を受け入れる形で新基準を撤回しました。それによってZen Magnetsは再び製品の販売が可能になりましたが、それでもなおマグネットボールを規制したいUSCPSCは、2017年に新たなリコールの基準を提出してZen Magnetsとの法廷闘争を続けていました。

そして2018年6月、コロラド州地方裁判所が「USCPSCのリコール要請を却下する」との判決を下したため、Zen Magnetsはついに6年間にもわたる法廷闘争で勝利を収めました。Qu氏は今回の結果を受けて、「私たちを支えてくれた何千人もの支援者に感謝します。Zen Magnetsが今まで存続でき、これから先も事業を続けられるのは驚きです」とコメントしています。

Qu氏は「私たちはもはやUSCPSCと争わず、協力してマグネットボールの安全基準を作り上げていく準備ができています」と述べており、すでに自社製品で実施している誤飲を防ぐ対策や年齢制限等を、マグネットボールの安全基準にしたいと述べました。

by Neil R