牛は「直接人間に話しかけられる」ほうが録音再生された声より好き
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により直接会いに行くことができず、電話やZoomでしか遠くに住んでいる家族や友人と話せないという人の中には、「やっぱり直接会って話をしたい」と思っている人も多いはず。牛を対象に行われたオーストリアの研究により、牛も「スピーカーからの声より、直接話しかけられた声の方を好む」ということが判明しました。
Frontiers | Talking to Cows: Reactions to Different Auditory Stimuli During Gentle Human-Animal Interactions | Psychology
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpsyg.2020.579346/full
Cows prefer “live” co-moo-nication, study reveals – Science & research news | Frontiers
https://blog.frontiersin.org/2020/10/15/frontiers-in-psychology-cow-behaviour-animal-welfare/
Cows prefer to communicate in person, new reseach suggests - CNN
https://edition.cnn.com/2020/10/15/world/cows-cattle-communication-scn/index.html
過去に行われた実験により、牛の鳴き声には個性や感情が表れていることや、牛同士で声を使ったコミュニケーションが行われていることが分かっています。
牛の「モーモー」という鳴き声に隠された秘密とは? - GIGAZINE
また、「牛は人間に自分の名前が呼ばれたことを理解している」ことや、「呼びかけに応じて自分で搾乳室に行くことができる」ということも判明していますが、牛が人間の声をどのように感じているのかを調べた研究はこれまでほとんど行われてきませんでした。
そこで、ウィーン獣医大学のアニカ・ランゲ氏らは、生後7~24カ月の未経産牛28頭を対象に、実験者が声をかけながらなでて反応を見る実験を行いました。
実験は、実験者がゆっくり話しながら牛をなでる「ライブ」と、録音した実験者の話し声を再生しながら牛をなでる「プレイバック」の2種類を各3回ずつ実施するというもの。牛の反応の違いは、実験中の牛の様子を撮影した映像と心拍数を記録したデータにより評価されました。
その結果が以下。4つのグラフはそれぞれ、実験中の牛がリラックスしていることを示す動作である「首を伸ばす(左上)」「密着する(右上)」「目を閉じる(左下)」「頭をもたれさせる(右下)」を行った時間の長さを表したものです。各グラフの白いバーで示された「ライブ」が色付きのバーで示された「プレイバック」よりも長いことから、直接話しかけながらなでられた牛の方が、よりリラックスしていることが分かります。
こうした牛のしぐさについて、ランゲ氏は「リラックスして交流を楽しんでいる牛は、2頭の牛がお互いをグルーミングをしている時のように首を伸ばすことがよくあります」とコメントしています。
by Institute of Animal Welfare Science, Vetmeduni Vienna
また、以下は心拍数を比較したグラフです。「ライブ」ではなでている最中の「STIM」からなでられた後の「POST」にかけて心拍数が落ちていますが、「プレイバック」では「なでられている最中」と「なでられた後」の心拍数の減少がわずかしかないという結果でした。研究チームによると、これは「ライブ」がより顕著なリラックス効果を発揮したことを示しているとのこと。「ライブ」の方がなでられている最中の心拍数が多いのも、牛が直接話しかけられながらの交流を楽しんでいる証拠なのだそうです。
ランゲ氏はこの研究結果について、「今回の研究は、録音した音声より直接話しかけられる方が、牛にとってはリラックスできることを示唆しています。今後、畜産業者や農家の方が牛の世話をする際に優しく接したり、素敵な言葉をかけたりする機会が今よりも多くなることを願っています」と話しました。
by Institute of Animal Welfare Science, Vetmeduni Vienna
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