EUがMetaに「広告が嫌なら金払え」をやめろと勧告、無料で個人情報も使わない「第3の選択肢」義務化へ
欧州データ保護委員会(EDPB)が2024年4月17日に、ターゲティング広告への個人情報利用に同意するか、または有料プランに加入するかの選択をユーザーに突きつけるMetaの「Consent or Pay(支払うか同意するか)」モデルは、EU一般データ保護規則(GDPR)に準拠していないとする見解を発表しました。
EDPB: ‘Consent or Pay’ models should offer real choice | European Data Protection Board
https://www.edpb.europa.eu/news/news/2024/edpb-consent-or-pay-models-should-offer-real-choice_en
Statement on EDPB "Pay or Okay" Opinion
https://noyb.eu/en/statement-edpb-pay-or-okay-opinion
EU Regulators Challenge Meta's 'Consent or Pay' Model •
https://contxto.com/en/europe/eu-regulators-challenge-metas-consent-or-pay-model/
FacebookやInstagramを運営するMetaは、ヨーロッパのユーザーを対象に、広告を削除できる月額9.99ユーロ(約1600円)の有料プランの提供を開始しました。しかし、あたかも個人情報を人質にして身代金を要求するかのようなこの慣行に対しては、プライバシーを基本的権利とするEUの法律に違反しているとの批判がなされています。
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オランダ・ノルウェー・ドイツのデータ保護当局(DPA)が、GDPR第64条2項に基づいて行った要請を受けて、EDPBは2024年4月17日の本会議で「大手オンラインプラットフォームが展開するConsent or Payモデルには、本当の意味で有効な第3の選択肢が設けられるべき」とする意見書を採択しました。
EDPBのアヌ・タルス委員長は声明で、「オンラインプラットフォームがConsent or Payモデルを採用する場合、ユーザーには真の選択肢が与えられるべきです。現行のモデルは一般に、個人が自分のデータをすべて提供するか、お金を払うかのどちらかを要求するものです。その結果、ほとんどのユーザーはサービスを利用するために同意しますが、その選択の意味は十分に理解されていません」と述べました。
EDPBは今回の決定で、「行動ターゲティング広告目的で個人情報を処理するサービスが、有料の代替手段のみを提供することが普通であってはならない」とした上で、Metaがユーザーに突きつけているConsent or Payモデルは、不当な圧力によらない自由な同意を得ることを要件とするGDPRに準拠していないとの見方を示しています。
この意見書は、Metaの今後の事業運営や、EUで展開されている他の大規模プラットフォームのサービスに大きな影響を与える可能性があります。
また、EDPBは個人情報の利用への同意と有料サブスクリプションへの加入に加えて、料金の支払いや行動ターゲティング広告を伴わない「同等な代替手段」が提供されるべきだとしています。具体的には、頻度が少なく個人情報も利用しない広告形態などです。
オーストリアの非営利団体・NOYBのマックス・シュレムス会長は、今回のEDPBの決定を歓迎するとコメントした上で、「本日発表された最初の意見書はかなり慎重で、限られた事実のみに基づいたものであることを懸念しています。Consent or Payは同意率を3%から99%に引き上げますが、これを自由な同意だと言うのは『北朝鮮は民主主義国家』と言うようなもので、事実からはかけ離れています。この問題の全容が明らかになれば、Consent or Payが完全に違法になるものと確信しています」と述べて、さらに踏み込んだ対応を求めました。
EDPBは今後、Consent or Payモデルに関するガイドラインの策定に向けて、利害関係者の参加を要請していくとしています。
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