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勤務時間外の上司のメールを無視する「つながらない権利」を従業員に認める法案をオーストラリア議会が可決


1日の仕事を終えて自由な時間を過ごしていたのに、上司から仕事に関するメールやメッセージが届いてしまい、うんざりした気分で返信した経験がある人もいるはず。近年は勤務時間外の仕事に関するメールを無視する「つながらない権利」の法制化が一部の国々で進められており、オーストラリア議会の上院である元老院が2024年2月に、労働者のつながらない権利を認める法案を可決しました。

Australia Introduces the ‘Right To Disconnect’ For Workers - The New York Times
https://www.nytimes.com/2024/02/08/world/australia/right-to-disconnect-law.html


Workers win the right to disconnect - Australian Unions
https://www.australianunions.org.au/2024/02/09/workers-win-the-right-to-disconnect/

Employers could face criminal penalties for contacting employees out of hours after right-to-disconnect laws pass - ABC News
https://www.abc.net.au/news/2024-02-09/ir-laws-employers-could-face-criminal-penalties/103445984

Australia passes Right To Disconnect law • The Register
https://www.theregister.com/2024/02/12/australia_right_to_disconnect_law/

かつて労働者は会社や職場にいる時間帯だけ仕事をすることが求められ、退社して帰宅すれば仕事から解放されることがほとんどでした。ところが、テクノロジーが発達するにつれて退社後も携帯電話やメール、メッセージングツールで連絡が容易に取れるようになり、勤務時間外なのに仕事に関わる連絡に対応しなければならない人が増加しました。また、在宅勤務の広がりによって職場と私生活の境目が曖昧になったこともこの傾向を加速し、実質的に起きている間ずっと会社とつながっている状態になる労働者が増えています。

勤務時間外のメールは従業員に大きなストレスや疲労をもたらすことがわかっており、近年は労働者が勤務時間外の連絡を無視することを認める「つながらない権利」の法制化が一部国々で進んでいます。

そんな中、オーストラリア議会の上院が2024年2月、労働者が勤務時間外の電話やメールを無視する権利の保護を盛り込んだ法案を可決しました。この法案では、オーストラリアの労働者は勤務時間外の「不合理な」コミュニケーションを拒否することができ、つながらない権利を行使した従業員に企業が何らかの罰を与えた場合、雇用主に罰金などが科せられる可能性があります。


オーストラリアの労働組合であるAustralian Unionsは、オーストラリアのフルタイム労働者の79%が所定時間外に働いたことがあり、年間280時間もの無償労働をしている計算になると指摘し、つながらない権利を認める新たな法案を歓迎しています。Australian Unionsによると、従業員は勤務時間外の連絡を拒否したことで紛争が起きた場合、公正労働委員会に裁定を申請できるとのことです。

オーストラリアの雇用職場関係相であるトニー・バーク氏は、「世界はつながっていますが、それが問題を引き起こしています」と述べて今回の法案を支持しています。その上で、シフト制の労働者などは、勤務時間外もメールをチェックしていないとシフト変更などの連絡に気づけず、トラブルが生じることもあると指摘。シフトの変更といった合理的な理由がある場合、雇用主が勤務時間外の労働者に連絡することが認められるものの、労働者はそれに応答する義務を負わないと説明しています。

一方で経済団体や保守派の野党は、新たな法案は性急であり企業に不利益を与えると批判しています。経済団体のBusiness Council of Australiaで最高責任者を務めるブラン・ブラック氏は、「この法案は企業に多大な負担を与え、雇用と機会の減少をもたらすでしょう」とコメントしました。また、野党自由党のミケイリア・キャッシュ上院議員は、「法案は生産性・雇用・成長・投資といった経済の成功に欠かせない要素を改善するものではありません。労働者はすでに不合理な労働時間に対する法的保護を受けています」と批判しました。

なお、今回の法案はすぐに代議院(下院)でも可決される見込みですが、オーストラリア政府はメールを送った上司に刑事罰を科すなどの条項は修正する予定です。政府サービス大臣を務めるビル・ショーテン氏は、上院での可決前に雇用主に対する刑事罰を廃止しようとしたものの、野党側の協力が得られなかったと主張。「労働者の権利向上を妨げようとするだけで、その他の問題解決には興味がないと言っているようなものです」と述べ、6カ月後の法制化前に法案を改正することは間違いないと説明しました。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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