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OpenAIのサム・アルトマン追放騒動の裏には幹部から取締役会に寄せられた「従業員への心理的虐待」の苦情があったという報道


現地時間の2023年11月17日、世界的AI企業であるOpenAIのCEOを務めるサム・アルトマン氏が退任することが報じられ、全世界に衝撃を与えました。その後、アルトマン氏の追放を決定した取締役会との交渉や、アルトマン氏復帰を求める書簡に従業員の9割超が署名するなどの騒動が続き、最終的にアルトマン氏のCEO復帰が決定しました。OpenAIを揺るがした一連の騒動の裏には、OpenAI幹部から取締役会に寄せられた「従業員への心理的虐待」の懸念や、取締役員が発表したOpenAIに批判的な論文への圧力などがあったと報じられています。

Warning from OpenAI leaders helped trigger Sam Altman’s ouster - The Washington Post
https://www.washingtonpost.com/technology/2023/12/08/open-ai-sam-altman-complaints/


The OpenAI Board Member Who Clashed With Sam Altman Shares Her Side - WSJ
https://www.wsj.com/tech/ai/helen-toner-openai-board-2e4031ef

Inside OpenAI’s Crisis Over the Future of Artificial Intelligence - The New York Times
https://www.nytimes.com/2023/12/09/technology/openai-altman-inside-crisis.html

2023年11月17日、チャットAIの「ChatGPT」を開発したことで知られるOpenAIが、突如としてアルトマンCEOの退任を発表しました。アルトマン氏の退任は取締役会の審議によるもので、実質的な追放だったことは容易に想像されたものの、当初は「アルトマン氏は取締役会とのコミュニケーションが一貫して率直ではなく、取締役会の責任を果たす能力に支障があるとの結論に達しました」とのみ発表され、その内実は明らかになっていませんでした。

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その後、アルトマン氏は取締役会に抵抗することを決意し、投資家や社内の支持者らを抱き込んで取締役会との交渉を始めました。この騒動にはOpenAIに多額の出資をするMicrosoftも必然的に巻き込まれることとなり、サティア・ナデラCEOが交渉に参加する事態に発展し、Microsoftはいざとなればアルトマン氏を迎え入れることも発表。「取締役会の刷新とアルトマン氏およびグレッグ・ブロックマン氏の復職」を要求する書簡には、OpenAIの全従業員の9割超に相当する700人以上が署名し、OpenAIを離れてアルトマン氏についていく可能性も浮上しました。

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最終的にアルトマン氏がOpenAIのCEOに復帰することが決定し、騒動は一応の決着を見ました。また、取締役会からは同社の共同創設者であり主任研究員も務めていたイルヤ・サツキヴァー氏、起業家のターシャ・マッコーリー氏、ジョージタウン大学セキュリティ・新興テクノロジーセンターで戦略ディレクターを務めるヘレン・トナー氏が追放され、議決権のないオブザーバーとしてMicrosoftが加わることとなりました。

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一連の騒動については、アルトマン氏とサツキヴァー氏の「AIの安全性」についての意見が対立したことや、OpenAIの安全性の取り組みについて批判する論文を発表したトナー氏の追い出しを画策したことなどが原因といわれてきました。

新たにアメリカの大手日刊紙であるワシントン・ポストは、「OpenAIの幹部が、アルトマン氏による従業員への心理的虐待について取締役会へ警告したこと」が、アルトマン氏の追放騒動につながったと報じました。取締役会の考えに詳しい2人の情報筋によると、2023年の秋にOpenAIの一部の上級幹部が、「アルトマン氏が不健全な方法で従業員を対立させている」と取締役会に対して懸念を表明したとのこと。


取締役会はアルトマン氏の振る舞いについて「abuse(虐待)」という言葉を使わなかったものの、ある従業員はアルトマン氏に対する批判的なフィードバックを共有した後、アルトマン氏がその従業員のチームを傷つけるようになったと報告したそうです。

また、取締役会のメンバーにとっては、10月にOpenAIに批判的な論文を発表したトナー氏に対してアルトマン氏が警告し、取締役会から追い出そうとしたことも懸念材料となっていました。情報筋によると、アルトマン氏は他の取締役員に電話をかけ、「マッコーリー氏がトナー氏の解任を望んでいる」と語ったそうですが、後に取締役員がマッコーリー氏に確認したところ「まったくのうそ」だと返答したとのこと。こうした前例もあり、取締役会はアルトマン氏が自分たちの対立と解体をあおっていると考え、秘密裏にアルトマン氏の解任を進めたと報じられています。

アルトマン氏は退任騒動の裏側についてのインタビューに応じていますが、取締役会の行動の理由については「今はこれ以上言うことがありません」と回答を避けています。

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なお、アルトマン氏はOpenAIへの復帰をX(旧Twitter)で発表した際に、「私と取締役会のメンバーとの間に大きな誤解があったことは明らかです」「OpenAIの強みに貢献してくれたヘレン(取締役会を解任されたヘレン・トナー氏)とターシャ(同じく取締役会を解任されたターシャ・マッコーリー氏)に感謝します」と述べており、取締役会との間に何らかの問題があったことをうかがわせます。


取締役会はアルトマン氏の追放が従業員からの反発に遭うであろうことは予想していたものの、OpenAIの経営陣がアルトマン氏の復帰を支持して一致団結することまでは予想外だったとのこと。また、一時はアルトマン氏の追放に賛同したサツキヴァー氏も意見を翻してアルトマン氏の復帰を求める書簡に署名し、最終的にアルトマン氏はOpenAIのCEOに復帰することとなりました。

サツキヴァー氏の弁護士であるアレックス・ワインガーデン氏は、「取締役会で何が起きていたのかについて、多くの乱暴で不正確な報道がなされています。しかし、大事なのはイリヤがサムはOpenAIのリーダーにふさわしいと公言しており、彼が再び指揮を執ることに興奮しているということです」とコメントしています。

なお、サツキヴァー氏はすでに削除されたXへのポストで、過去1カ月間に多くの教訓を学んだと意味深に述べていたとのこと。そのポストの中には、「そのような教訓のひとつは、『士気が向上するまで叩き続ける』というフレーズがとてもよく当てはまるということです」という一文もあったとワシントン・ポストは報じました。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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