Microsoft・Apple・任天堂といった大企業の提供するペアレンタルコントロール機能は「抜け穴だらけで不完全」との指摘
子どもがスマートフォンやPC、ゲーム機などを利用する様子を、親が監視・制限するための機能がペアレンタルコントロールです。Windows搭載PCやMacなど、さまざまなデバイスで利用できるようになりつつあるペアレンタルコントロールですが、まだまだ不完全で抜け穴やバグが非常に多く、簡単に回避できてしまうと、ソフトウェア開発者のガブリエル・ジーベン氏が指摘しています。
“Parental controls? What parental controls?” – Gabriel Sieben
https://gabrielsieben.tech/2023/11/15/parental-controls-are-unusable-and-its-why-congress-is-stepping-in/
◆Windows 11
MicrosoftはWindows向けのペアレンタルコントロールツールとして、「Microsoft Family Safety」を提供しています。このMicrosoft Family Safetyが抱える欠点をジーベン氏は8つ挙げています。
1:Microsoft Family Safetyを利用する場合、監視するのが8歳の子どもであっても、その子ども専用のMicrosoftアカウントを作成する必要があります。ローカルユーザーアカウント(オフラインアカウント)ではMicrosoft Family Safetyを利用することができません。
2:Windows CopilotやEdge Copilotを無効にすることはできません。文章を書くことを学び始めたばかりの子どもに、BingやChatGPTのAIを使用させたくないと思っても、それは不可能です。
3:Bingを無効にしない限り、Microsoft Edgeの新しいタブに表示されるニュースフィードを無効にすることはできません。
4:Microsoftの検索ボタンを無効化することはできません。検索ボタンでは驚くべきことに多くのタブロイドコンテンツが表示されます。Microsoft Family Safetyで子どものアカウントで表示されるコンテンツを「許可されたウェブサイトのみ」に設定したとしても、検索ボタンからタブロイドコンテンツが表示されてしまうのは問題であるとジーベン氏は指摘。
5:Windows 11ではウィジェットボタンを無効にすることも不可能です。ウィジェットの目的は明らかに「タブロイドコンテンツを提供すること」で、検索ボタンと同様にMicrosoft Family Safetyで子どものアカウントで表示されるコンテンツを「許可されたウェブサイトのみ」に設定しても、タブロイドコンテンツをブロックすることはできません。
6:Windows 11には映画・TV・Xbox・ニュースなどのアプリがプリインストールされています。これらのアプリを個別に開いてダッシュボードに表示してからMicrosoft Family Safetyでブロックしても、正しくブロックすることはできない模様。
7:Microsoft Family SafetyではMicrosoft Storeを無効にすることはできませんが、年齢制限を設定することは可能です。そのため、ジーベン氏は「『3歳以上向け』と評価されているすべてのアプリをブロックするように設定するのが最善」としています。
8:Microsoft Officeでは、Bingからコンテンツを埋め込むことができますが、これはペアレンタルコントロールによる制限を受けません。例えば、BingをブロックしてもインターネットフィルターはMicrosoft Edgeでのみ機能するため、子どもはWordに動画を埋め込むことであらゆる動画を視聴可能となります。
◆macOSおよびiOS
iOSにはペアレンタルコントロール、macOSにはスクリーンタイムという機能があり、これを使うことで子どもがデバイスを利用する時間を制限したり、子どものデバイスからアダルトコンテンツにアクセスできないようにしたりすることが可能です。
1:Appleのペアレンタルコントロールは非常に強力ですが、「愚かなほどバグがある」とジーベン氏。あまりにも多くのバグが存在しているため、Appleもメディアに対してバグの存在を認めたほどだそうです。また、「macOSの中でスクリーンタイムほどバグの多い機能はない」ともジーベン氏は指摘しています。
2:macOSのスクリーンタイムは、子どものアカウントのデーモン(バックグラウンドプロセス)を使用して実行されます。しかし、このデーモンは数時間実行されるとランダムにクラッシュしてしまうため、せっかく行った設定がすべて無効になってしまう模様。また、この状態は子どもがログアウトして再びログインするまで維持されてしまうそうです。
3:Appleのペアレンタルコントロール機能には、「許可されたウェブサイトのみ」閲覧可能にするというオプションがありますが、Appleはこの機能を一度も使用したことがないようだとジーベン氏は指摘。初回ログイン時にはランダムなIPアドレスやAppleのドメインを承認するためのプロンプトが大量に押し寄せ、機能を有効にするにはPINコードを何十回も入力しなければいけなくなるそうです。
4:ペアレンタルコントロール機能でブロックしたページには「このウェブサイトを許可する」というボタンが表示されるのですが、この機能はランダムで機能不全に陥る模様。この原因はコードベースが非常に古く、恐らく長らくテストされておらず、HTML5ですらない可能性があるためだそうです。つまり、誰かがこの機能を開発してから長らく放置されている可能性があるため問題が生じていると、ジーベン氏は指摘しています。
5:macOSの「許可されたウェブサイト」リストには、コードのテストがどれだけ不十分であるかを示すコミカルで初歩的なバグが複数存在します。例えば、環境設定を開くと「許可されたウェブサイト」(A、B、C)のリストが表示されます。ここに新しいウェブサイト(D)を追加し、環境設定を閉じたとします。この場合、再び環境設定から「許可されたウェブサイト」のリストをチェックしても、新しく追加したはずのウェブサイト(D)はリストに追加されていないものの、システム上では「許可されたウェブサイト」として扱われる模様。ここでさらに新しいウェブサイト(E)をリストに追加すると、環境設定画面のリストにはA、B、Cの3つのウェブサイトが並び、システム上ではA、B、C、Eが「許可されたウェブサイト」として扱われるそうです。つまり、新しいウェブサイト(E)を追加したことで、ひとつ前に追加したはずのウェブサイト(D)が「許可されたウェブサイト」のリストから削除されてしまう模様。
◆Nintendo Switch
ジーベン氏は「私は基本的に任天堂が好きですが、Nintendo Switchのペアレンタルコントロール(みまもり設定)は許しがたいものです」と指摘。Nintendo Switchのペアレンタルコントロール機能が抱える問題点は以下の4つ。
Nintendo みまもり Switch 紹介映像 - YouTube
1:Nintendo Switchのペアレンタルコントロール機能はデバイスごとに設定されます。そのため、例えば複数の子どもがいて、複数のNintendo Switchを所有する余裕がない家庭の場合、問題が起きるとジーベン氏。
2:そもそもNintendo SwitchにはPINロックを設定する機能がないため、子どもたちは他の人のNintendo Switchアカウントに簡単にアクセスできてしまいます。
3:Nintendo Switchではメニューに表示されるゲームのタイトルを非表示にすることができません。同じNintendo Switchを子どもと共有で使用している場合、大人が年齢制限のあるタイトルをプレイしてしまうと、子どもがNintendo Switchをプレイする際にホーム画面に年齢制限のあるゲームが表示されてしまいます。これを防ぐ手立てはなく、子どもがプレイすることも可能となってしまうそうです。
4:ペアレンタルコントロール機能を使ってニンテンドーeショップ(Nintendo Switchのオンラインゲームストア)の購入や閲覧を制限することができますが、子どもが簡単に保護者のアカウントを利用できてしまうため、これは機能していないも同然です。子どもがニンテンドーeショップにアクセスしてできてしまえば、Hentai GirlsやWaifu アンカバードのようなタイトルを目にしてしまう可能性があるとジーベン氏。
◆ルーターベースのフィルタリング
ルーターベースのフィルタリングが最良の解決策のひとつであると、ジーベン氏は指摘。しかし、これも完ぺきというわけではありません。問題点は以下の5つ。
1:すべてのこどもが自分のデバイスを持たなければいけなくなります。これは貧しい家庭では実現が難しいオプションです。
2:ルーターベースのフィルタリングを設定することは難しいため、多くの親にとってハードルの高い選択肢となり得ます。
3:Eeroのようなハイエンドのルーターは非常に使いやすいペアレンタルコントロール機能を備えていますが、これを利用するにはサブスクリプションサービスに登録する必要があります。例えばEeroの場合、月額9.99ドル(約1480円)が必要となります。デバイスに200ドル(約3万円)を支払った後、毎月サブスクリプションサービス分の費用も支払うというのは「現実的なオプションではない」とジーベン氏。
4:一部のルーターには「誰がこんな機能使うんだ?」というようなペアレンタルコントロール機能があるそうです。例えば一部のNETGEAR製ルーターの場合、「ウェブサイトをブロック」することができるペアレンタルコントロール機能が備わっているそうですが、保護者がブロックするウェブサイトをドメインごとに個別に入力する必要があります。インターネット上には無数のウェブサイトが存在することを考えると、このブロック機能はほとんど無意味であり、「弁護士がいれば虚偽広告で訴えていた」とジーベン氏は語っています。
5:ルーターベースのフィルタリングを行う場合、例えばニンテンドーeショップへのアクセスをブロックしてしまえば、ソフトウェアのアップデートやゲームのオンラインプレイもそのままブロックされてしまいます。ルーターベースのブロッキングには上記のような問題が発生しがちであるため、完璧な解決策とはならないとジーベン氏は指摘しました。
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