サイエンス

セックスが高齢者の認知機能に良い影響をもたらすという研究結果


セックスは人生を豊かにしてくれるものですが、セックスが人の脳や老化に対してどのような影響を及ぼすのかはあまり知られていません。新たに、アメリカのホープ大学パデュー大学の研究者らが行った調査で、高齢者のセックスが認知機能の向上に関連している可能性があると判明しました。

Is Sex Good for Your Brain? A National Longitudinal Study on Sexuality and Cognitive Function among Older Adults in the United States: The Journal of Sex Research: Vol 0, No 0
https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/00224499.2023.2238257


Sexual activity predicts enhanced cognitive function in older adults, study finds
https://www.psypost.org/2023/10/sexual-activity-predicts-enhanced-cognitive-function-in-older-adults-study-finds-213954

Sex Appears to Protect Brain Health in Older Adults, Scientists Say : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/sex-appears-to-protect-brain-health-in-older-adults-scientists-say

一般的に高齢になればなるほどセックスの頻度は低下すると考えられていますが、アメリカの研究では65~74歳の高齢者の53%がセックスを続けていると報告されています。また、性的欲求やセックスの頻度が低下した高齢者は健康状態の悪化を訴える傾向が高く、幸福度が低いこともわかっています

ホープ大学の社会学者であるシャノン・シェン氏は、「私が性的関係に焦点を当てるのは、性的関係は高齢者の人口では見過ごされがちな親密な社会的関係の形態だからです。認知機能の低下に関する研究は数多くありますが、肉体関係が認知機能にとってどのように有益なのかを考察した研究はほとんどありません」と指摘しています。


そこでシェン氏らの研究チームは、全国社会生活・健康・老化プロジェクト(NSHAP)という縦断研究プロジェクトがアメリカに住む高齢者から収集したデータを分析し、セックスが高齢者の認知機能に及ぼす影響について調べました。

研究チームはデータの経時的な変化を分析するために、少なくとも2005年~2006年に実施された「ラウンド1」と、2010年~2011年の「ラウンド2」の両方を完了した2409人の回答を抽出。さらに、「62歳以上」「認知機能に関する」「結婚またはパートナーと同居している、あるいは性的パートナーがいるかどうか」といった項目で絞り込み、最終的に1683人の回答者のデータを分析したとのこと。

被験者の認知機能はモントリオール認知評価を使用して測定され、性的活動についてはセックスをする頻度やセックスから得られる身体的快楽の程度、感情的な満足度について評価されました。


データを分析したところ、少なくとも週に1回セックスをする75~90歳の高齢者は、過去1年間にセックスをしなかった高齢者と比較して、5年後により高い認知機能を持っている傾向がみられました。これは、セックスの頻度が高齢者の認知機能を向上させる可能性があることを示唆しています。

また、62~74歳の比較的年齢層の低い高齢者の場合、セックスと認知機能との関連は「セックスの質」に関連していることがわかりました。この年齢層の高齢者は、「とても楽しく満足のいくセックス」をしたと回答した場合、セックスを楽しまなかった高齢者と比較して5年後の認知機能が高かったとのことです。

男性と女性はいずれもセックスの頻度と認知機能の関連を示しましたが、男性ではセックスにおける身体的快楽が5年後の認知機能に関連していたのに対し、女性では同様の傾向がみられなかったと報告されています。


今回の研究では、ある時点におけるセックスの頻度から後の認知機能をある程度予測できた一方で、ある時点での認知機能から後のセックス頻度を予測することはできませんでした。シェン氏は、「認知機能と5年後の性行為や性的な質との関連について、有意な結果が得られなかったことは意外でした」と述べています。

研究チームはセックスの頻度が後の認知機能に影響を及ぼす理由について、「セックスに伴う身体活動が心血管系の健康状態を改善し、結果的に脳への血流増加をもたらして認知機能を改善する」「ストレスは記憶に関連する一部のニューロンの成長を妨げることが知られているが、セックスはこのストレスを軽減するため認知機能の改善につながる」「セックスは記憶力に関連するドーパミンの放出を促すため認知機能を改善する」といった仮説を挙げました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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