サイエンス

コイントスは完全なランダムではなく出る向きに微妙な偏りがあることが35万回以上のコイントスを分析した結果判明


コインをはじいて裏表を当てる「コイントス」は、2つの選択肢からランダムに1つ選ぶ際に用いられることがあります。ところが、国際的な研究チームが35万回以上のコイントスの結果を分析したところ、コイントスの結果は完全なランダムではなく、実は微妙な偏りがあることが判明しました。

Fair coins tend to land on the same side they started: Evidence from 350,757 flips
https://arxiv.org/abs/2310.04153


The Way You Flip a Coin Could Mean It's Not as Random as You'd Expect : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/the-way-you-flip-a-coin-could-mean-its-not-as-random-as-youd-expect

コイントスは日常的な賭けや遊びだけでなく、スポーツの国際試合や企業の重要なプロジェクトなど、その結果が大きな影響を及ぼす場面でも行われます。そのため、もしコイントスの結果に微妙な偏りが存在するのであれば、それは重大な結果をもたらす可能性があるといえます。


そこで、国際的な研究チームのメンバー48人は自らが被験者となり、46種類の通貨を使って何回もコイントスする様子を動画に撮影しました。そして得られた合計35万757回のコイントスの結果を分析し、出る面に偏りが出るかどうかを調査しました。

分析の結果、コイントスは「コインをはじく前に上を向けていた面」の方がわずかに出やすいということが判明。具体的には、35万757回のうち17万8078回は最初に上を向けていた面が出たとのことで、パーセンテージにすると「50.8%」という結果になりました。異なるコインでも「最初に上を向けていた面が出やすい」という偏りがみられた一方、「表か裏か」という点での偏りはみられなかったとのことです。


実は、「コイントスは最初に上を向けていた面の方が出やすい」という説は、2007年の段階で数学者のパーシ・ダイアニコス氏らによって提唱されていました。今回の実験結果は、ダイアニコス氏らの主張を裏付けるものとなります。

研究チームは、「パーシ・ダイアニコス氏は人がコイントスを行う時、わずかな歳差運動やぐらつき(コインの軌道全体で回転軸の方向が変化すること)が生じると提唱し、コイントスの標準モデルを拡張しました。ダイアニコス氏のモデルによれば、歳差運動によってコインは最初に上を向いていた面を上に向けたまま、空中でより多くの時間を過ごすことになります。その結果、コインは最初と同じ面に着地する確率が高くなります」と述べました。

なお、コイントスの偏りは研究者間で異なったそうで、「その人がどのようなフォームでコイントスを行うのか」「コインを空中でキャッチするかどうか」などの要因も、結果に影響を及ぼす可能性があるとのこと。


「コイントスは最初に上を向けていた面の方が50.8%出やすい」という結果は、たった1回の試行でみれば大きな差ではないと思うかもしれません。しかし、「2人が100円ずつ賭けてコイントスの出た面を当てた方が200円もらう」というゲームで一方が「最初に上を向いていた面」に賭け続けた場合、1000回あたり平均1900円の利益が出る計算になります。また、重要な場面のコイントスであれば、たった「0.8%」でも勝率を上げたいと思う人は多いはず。

研究チームは、「コイントスは広く人気であるにもかかわらず、『コイントスの結果はランダムではないのではないか』と立ち止まって考える人はほとんどいません」と指摘。今回見つかった偏りを利用されないようにするため、重要なコイントスでは最初に上を向けている面を隠した方がいいと提案しました。

なお、今回の研究結果はまだ査読付きジャーナルに掲載されておらず、プレプリントサーバーのarXivで公開されています。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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