サイエンス

一見すると絶対もうかるように見えるのに挑み続けると大敗する魔のコインゲーム「ピータースのコイントス」


ピータースのコイントス」は「大勢の参加者の平均」を求めると必ずプラスになる賭け事に見えるのに、実際に何度も挑むと大敗を喫することになる魔のコインゲームです。ピータースのコイントスを考案したオーレ・ピータース氏は、当該ゲームの恐ろしさが一発で分かるシミュレーターを公開しています。

The infamous coin toss – Ergodicity economics
https://ergodicityeconomics.com/2023/07/28/the-infamous-coin-toss/

ピータースのコイントスのルールは以下の通り。
・所持金は100ドルからスタート
・コインを投げて表が出たら所持金の50%を追加でもらえる
・コインを投げて裏が出たら所持金の40%を没収される
・コイントスは何回繰り返してもOK

ルールをパッと読むと「もらえる割合の方が没収される割合よりも大きいから、何回も続ければ絶対にもうかるのでは?」と考えてしまいます。以下のシミュレーターを操作すると、実際にピータースのコイントスに挑んだ際の所持金の推移を計算できます。

ラウンド回数10回で参加人数を変更するシミュレーター
https://coin-n.streamlit.app/


シミュレーターの使い方は簡単で、スライダーを左右に動かしてゲームへの参加人数を指定してから「Simulate」をクリックするだけです。


プレイ人数1名でシミュレートした結果が以下。横軸がゲームのラウンド数で、縦軸は所持金が最初の100ドルから何倍になったかを示しています。所持金の推移(青色の線)を確認すると、10ラウンド目で10倍近くまで増えていることが分かります。


再度シミュレートすると、今度は所持金が約10分の1まで少なくなってしまいました。


参加人数100人の所持金の平均はこんな感じに推移します。参加人数を100人に指定すると何度「Simulate」をクリックしても所持金がわずかに増加するようになりました。


「100人の平均をとるとプラスになるなら、参加し続ければ必ず所持金が増えるのでは?」と考えた人も多いはず。そんな考えを吹き飛ばすのが以下の「参加人数1人でラウンド回数を変更するシミュレーター」です。

参加人数1人でラウンド数を変更するシミュレーター
https://coin-t.streamlit.app/


スライダーの左右でラウンド数を指定してから「Simulate」をクリックすると所持金の推移グラフが描画されます。


10ラウンドプレイした場合、最終的な所持金はプラスになったりマイナスになったりします。


ところが、ラインド回数を増やすていくと所持金がプラスになる頻度がどんどん少なくなります。例えばラウンド数を250回に設定した際のシミュレート結果が以下。


そして500ラウンドプライした際のシミュレート結果が以下。所持金は10兆分の1よりも少なくなってしまいました。


試行回数が増えると所持金が減ってしまう理由は簡単です。例えば100ドルからスタートして1ラウンド目で負けた場合、所持金は100-100×0.4で60ドルとなります。そして2ラウンド目で勝った場合、所持金は60+60×0.5で90ドルとなります。つまり、1回の負けを1回の勝ちで帳消しにすることはできないため、勝敗の確率が五分五分のコインゲームを何度も続けるとズルズルと負けてしまうわけです。

なお、ピータースのコイントスは「1個人の時間平均」と「時刻を固定した際の集団の平均」が同一になるとする「エルゴード性」を打破するために生み出されたゲームです。ピータース氏本人による「ピータースのコイントスでエルゴード性を打破する」という内容の講演は以下のムービーで確認できます。

TEDxGoodenoughCollege - Ole Peters - Time and Chance - YouTube

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in サイエンス,   動画, Posted by log1o_hf

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