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なぜ自分を犠牲にしてでも他人に親切にする利他的行動が成立するのかをコイントスで解説


人間は、自らの利益にならなくとも他人を助ける生物です。こうした利他的な行動は進化生物学における謎として研究対象となっていますが、なぜこのような行動を取るのかについての根拠となり得る一説を、経済学者のオーレ・ピータース氏がコイントスを基に解説しています。

For to withhold is to perish – Ergodicity economics
https://ergodicityeconomics.com/2023/08/29/for-to-withhold-is-to-perish/

以前ピータース氏は、コイントスを複数人で繰り返すと良い結果が出るのに、一人で繰り返すと悪い結果が出るという不思議な理論「ピータースのコイントス」を提唱しました。これについては以下の記事で詳しく解説しています。

一見すると絶対もうかるように見えるのに挑み続けると大敗する魔のコインゲーム「ピータースのコイントス」 - GIGAZINE


ピータースのコイントスのルールは以下の通りです。
・スタートの所持金は100ドル
・コインを投げて表が出たら所持金の50%を追加でもらえる
・コインを投げて裏が出たら所持金の40%を没収される
・コイントスは何回繰り返してもOK

ピータースのコイントスは一見すると「やればやるほど損をするゲーム」のように感じられます。コイントスで表または裏が出る確率はそれぞれ2分の1。一人が表(1.5倍)と裏(0.6倍)を1回ずつ出した場合、1.5×0.6で0.9倍となり、所持金が2ラウンドで10%減ってしまいます。

しかし、このゲームを複数人でプレイし続けると結果が変わります。プレイヤーの数が無限に近い場合、プレイヤーの半分は1ラウンドで表を出して100ドルが150ドルになり、もう半分は裏を出して100ドルが60ドルになります。150ドルと60ドルを足して2で割ると105ドル。1ラウンドで全体の所持金は5%ずつ増えていく計算になります。


「一人でプレイし続けると負けるが、二人以上でプレイし続けると勝つ可能性がある」というゲームを提示されたとき、勝つためにはもちろん二人以上でプレイすることが必要。二人以上でプレイした上で収益を分ければ、お互い損せずに済む可能性が高まります。

シミュレーションを行うと、協力者が一人増えるごとに収益はプラスになり、三人集まった時点で損益分岐点を上回ることがわかります。以下のシミュレーターでは、協力者(N)と試行回数(T)を好きに調節して結果を見ることができます。

https://cooperatingcoinonlinepy-sx2zi38gvy.streamlit.app/


この結果からわかるとおり、一人で行動することを選んだ人間は衰退し、与えることを学んだ人間は繁栄します。あくまでピータース氏の仮説に基づいた場合の理論でしたが、ピータース氏は「経済学者の視点を変える一説である」と論じ、「人間は集団を増やし続けることができ、無限に多くの協力者がいる限界では、富は期待値の成長率で成長します。より多くの共有が行われれば行われるほど、私たちはより早く進歩を遂げることができるのです」と述べました。

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in Posted by log1p_kr

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