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キャラクターが目的のために悪い手段に出ることを読者が許容できる条件について心理学者の作家が解説


物語のキャラクターは常に誠実で正しい選択をするわけではなく、ときには悪人ではなくても重要な目的のために不道徳的な行為や不義理な選択などをすることもあります。読者はそのようなキャラクターを「許せない」と嫌いになってしまうことも、「目的のために手段を選ばないのはクールだ」と好意的に感じることもありますが、キャラクターの行動に対する読者の反応はどのような条件で変化するのかを、心理学者で小説家のR・J・ジェイコブス氏が解説しています。

When is a Character’s Dishonesty Justified? ‹ CrimeReads
https://crimereads.com/when-is-a-characters-dishonesty-justified/


ジェイコブス氏が2023年9月にリリースした小説「This Is How We End Things」は、倫理的に問題のある研究を行う小さな大学の心理学部が舞台となっています。ジェイコブス氏によると、心理学の研究の歴史には悪名高い実験も数多くあり、参加者に害を及ぼすものや、研究の目的を偽るものも実在していたそうです。一方で、それらの初期研究から得られた洞察が心理学の分野を前進させたことは間違いなく、「This Is How We End Things」でもそういった心理学研究の「非倫理的な面」「実際的な面」を描写しています。


「登場人物が少し間違ったことをして、大きな正しい結果を導くのは、どのような場合に正当とみなされるのか?」という疑問に対し、ジェイコブス氏は2つのポイントを挙げています。

まず1つ目に、善良な目的を追求するためにキャラクターが自分についての情報を偽る場合、倫理的ないし正当なものとして受け入れられることが多くなっています。「This Is How We End Things」では、キャラクターが自分の過去について他の人にウソをつく理由は、現在の仕事に意味があり将来的に多くの人を助ける結果を見込めるからとなっています。また、ケイト・クイン氏の「The Clinic」という作品では、妹の死因を調査するために身分を偽って妹のいた施設に入る女性が描かれます。キャラクターが自分のアイデンティティについて偽ると、読者は「このキャラクターはウソつきで他人をだましている」と感じてしまいますが、ウソをつく善良な目的が示されていると、正当なものとして許容されやすくなります。


2つ目に、キャラクターが自身を守るため、または善良な結果を追及するために、自分が知っている情報を隠したり偽ったりする場合も、読者に受け入れられるものとなっています。ジェイコブス氏はアガサ・クリスティの「オリエント急行殺人事件」を「正当な偽りの典型的な例」として挙げており、キャラクターたちは自身の内面を守るために、知っているはずの事件の内容について隠し続けています。


総合して、ジェイコブス氏はウソや不正行為について「感情的に弱っている人」「死に直面している人」「真実によって自分もしくは周りの状況が悪化する人」が行う場合、正当であると見なされるとまとめています。反対に、これらの条件に当てはまらない場合に不正な手段を選択した場合、キャラクターが読者に悪い印象を想像以上に与える可能性があります。

とりわけミステリーやスリラーにおいては、キャラクターたちによるウソや欺きがあるからこそ物語が面白くなることがあります。物語を面白くするために加えたエッセンスで、かえって読者を不快にさせたりキャラクターに感情移入できなくなったりしないように、キャラクターの状況と目的を客観的に考慮することが重要です。

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in メモ, Posted by log1e_dh

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