3年間で17人の医師が見つけられなかった少年の痛みの原因をChatGPTが特定することに成功
OpenAIが開発したChatGPTは、アメリカの医師免許試験であるUnited States Medical Licensing Exam(USMLE)に合格できると報告されるほど精度の高い文章を生成することが可能で、さまざまな分野への応用が期待されています。そんなChatGPTが、3年間で合計17人の医師が原因を特定できなかった、7歳の少年が抱える慢性的な痛みの原因を明らかにしたことが報告されています。
ChatGPT Diagnosed A Boy's Pain. 17 Doctors Over 3 Years Could Not
https://www.today.com/health/mom-chatgpt-diagnosis-pain-rcna101843
2020年当時4歳だったアレックス君は体の痛みを突如訴え始めました。そこで母のコートニー氏は毎日アレックス君に痛み止めを与えていたとのこと。
当初は痛み止めの投与でアレックス君の痛みは和らいでいましたが、その後、アレックス君の体の痛みは悪化。痛みを我慢するためにさまざまな物にアレックス君は噛みつきました。アレックス君の両親は「息子に虫歯があるのではないか」と考え、歯科医の診断を受けさせました。
歯科医はアレックス君が虫歯ではないことを特定。また歯科医はアレックス君が歯ぎしりをすることで睡眠に影響が出ているのではないかと考え、気道閉塞(へいそく)を専門とする矯正歯科衛生士を紹介しました。
歯科衛生士は、アレックス君の口蓋が口と歯に対して小さすぎるため、夜間の呼吸が困難になっているのではないかと推測し、アレックス君の口蓋に矯正器具を取り付けました。その結果、アレックス君の状態は一時改善したとのこと。
その後、アレックス君の体が年齢の割に成長していないことを危惧したコートニー氏は、2021年に小児科医を受診。小児科医による診断では、アレックス君の左足と右足のバランスが崩れていることが発見されました。コートニー氏は「当時アレックスは左足を引きずりながら歩いていました」と述べています。そこで小児科医はアレックス君に理学療法を行うことを推奨しました。
一方でアレックス君は当時激しい片頭痛や倦怠(けんたい)感にも襲われていたため、コートニー氏はアレックス君を神経内科や耳鼻咽喉科の医師の元に連れて行きました。しかしコートニー氏は「何人の医師に診てもらっても、特定の症状にしか対処してもらえず、アレックスが抱えた痛みの根本的な原因を見つけることはできませんでした」と述べています。
アレックス君は3年間で17人もの医師の診断を受けましたが、痛みの根本的な原因を特定することはできませんでした。そこでコートニー氏がChatGPTに対してアレックス君の症状を入力すると、ChatGPTは「係留索症候群ではないか」という回答を生成しました。
係留索症候群とは、歩行の異常や慢性的な痛み、自律神経症状が発症したりする、主に子どもに見られる病気です。係留索症候群の子どもを持つ家族のためのコミュニティに参加したコートニー氏は、係留索症候群に詳しいミシガン大学の小児脳神経外科医であるホリー・ギルマー氏を尋ねました。するとアレックス君が係留索症候群であることが診断され、治療が行われました。
ギルマー氏は「幼い子どもは自身の症状を正確に話すことができないため、係留索症候群の診断が困難な場合があります」と述べています。ようやくアレックス君の診断結果が明らかになったコートニー氏は「安心や納得、息子の将来に対する興奮など、あらゆる感情が湧き起こりました」と語っています。
診断を受けたアレックス君はすぐに手術を受け、記事作成時点では回復に向かっているとのこと。ギルマー氏は「係留索症候群に対する手術を受けた子どもたちは比較的早期に回復することができます。多くの場合、適切な治療を行うことで、係留索症候群の症状を和らげることが可能です」と述べています。
ChatGPTを使った病気の診断に関する研究はさまざまな研究機関で進められており、 アメリカ救急医学会(AAEM)では、患者の病歴や身体検査、投薬履歴などを用いた救急医療の場での診断にChatGPTを使用する研究が行われています。
また、Googleが2023年5月に発表した大規模言語モデル「PaLM 2」をベースに、健康データでトレーニングされた「Med-PaLM 2」を用いた医療用AIチャットボットが、一部の医療機関でテストされていることが報じられています。
Googleの医療用AIチャットボットがすでに医療機関でテストされている - GIGAZINE
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