生き物

アリ同士の戦争を名作RTS「エイジ オブ エンパイアII」での戦闘シミュレーションと比較した研究結果とは?


女王アリと働きアリとオスアリで役割を分担して共同体として繁栄するアリは社会性昆虫といわれます。なわばりが被ると集団同士で争うこともあるアリがどのように戦うのかについて、西オーストラリア大学とオーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)のチームが、Microsoftのリアルタイムストラテジー(RTS)「エイジ オブ エンパイアII: エイジ オブ キング」を用いて研究した結果を報告しています。

Complex battlefields favor strong soldiers over large armies in social animal warfare | PNAS
https://dx.doi.org/10.1073/pnas.2217973120


Ant wars: How native species can win the battle over invasive pests
https://phys.org/news/2023-08-ant-wars-native-species-invasive.html


西オーストラリア大学動物生物学科のラファエル・ディダム教授は、「アリのような社会性昆虫は人間と同じような規模で戦争を行う数少ない種の1つです。これは、戦いを担当する働きアリの進化の未来が、アリの集団にとってより大きな利益になるために投資されているからです」と述べています。

研究チームは最初に「エイジ オブ エンパイアII: エイジ オブ キング」を使い、個人戦闘力が最も高い歩兵ユニットであるエリートチュートンナイトと、個人戦闘力が低い歩兵ユニットである重剣剣士で戦闘シミュレーションを行いました。

1ユニット同士の戦いを10回行ったところ、すべての戦いでエリートチュートンナイトが勝利しました。しかし、重剣剣士の数を5~10人にまで増やすと、エリートチュートンナイトがすべての戦いに負けるようになりました。


さらに、9人のエリートチュートンナイトに対し、重剣剣士の人数を20人から90人に増やしていくと、エリートチュートンナイトの勝率は減少。さらに複雑な地形よりもシンプルなアリーナで戦った方がエリートチュートンナイトの死亡率が高くなりやすいことが判明しました。

次に、オーストラリアの在来種であるオーストラリア肉アリ(Iridomyrmex purpureus)と、害虫として知られる外来種のアルゼンチンアリ(Linepithema humile)の戦いを観察しました。オーストラリア肉アリは大型で、オーストラリアの低木林値に多く生息し、砂利質の巣を作ります。一方、アルゼンチンアリは小型ですが攻撃的で、大規模で協力的なコロニーを形成することで知られています。

研究チームによると、オーストラリア肉アリとアルゼンチンアリが1個体同士で戦うと、体格の差もあってほぼ必ずオーストラリア肉アリが勝利するとのこと。しかし、集団同士の戦いになると、オーストラリア肉アリよりもアルゼンチンアリの方が軍隊の規模は大きくなります。

by patrickkavanagh

実際に集団同士で戦わせてみたところ、アルゼンチンアリの軍隊と対峙(たいじ)したオーストラリア肉アリの死亡率は、複雑な地形では低く、シンプルな地形では高いことがわかりました。個体の戦闘力は高いが集団規模は小さいオーストラリア肉アリをエリートチュートンナイト、個体の戦闘力は低くても集団規模は大きいアルゼンチンアリを重剣剣士と重ねると、ゲームでの戦闘を元にした数学モデルとアリ同士の戦いに共通点がみられると研究チームは主張しています。

ディダム教授は「人間やコンピューターゲームと同じように、アリ同士の戦争も戦場の性質に結果が左右されるのです」と論じました。

CISCOの主席研究員であるブルース・ウェバー氏は、アリ同士の戦いについての研究は、外来種のアリの管理に実用できると主張しています。ウェバー氏は「アルゼンチンアリのように、外来種のアリは在来種よりも小型ながら数が多く、伐採されたような場所では支配的であることがよくあります。伐採された場所では草や自然のがれきが取り除かれるので、オープンでシンプルな戦場になることがよくあります」と述べ、在来種と外来種が共存する場所に落木や石などを追加することで、在来種が有利になるようなバランス調整が可能だとしています。

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in サイエンス,   生き物,   ゲーム, Posted by log1i_yk

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