グンタイアリは自分たちの体で橋を作るとき2つのシンプルなアルゴリズムに従っている

by Axel Rouvin

グンタイアリは一般のアリと違って巣を作らず、大量の群れが軍隊のように行進しながら生活することで知られています。グンタイアリは通常では進めないような場所にアリの個体が集まって橋を架け、群れがその上を進むという習性がありますが、グンタイアリが規則正しく橋を架けるアルゴリズムについて、Quanta Magazineがまとめています。

The Simple Algorithm That Ants Use to Build Bridges | Quanta Magazine
https://www.quantamagazine.org/the-simple-algorithm-that-ants-use-to-build-bridges-20180226/

グンタイアリは100万匹にも及ぶ規模のコロニーを形成し、定住する巣を持たずに餌を求めてジャングルを動き回ります。その果てしのない行軍の中で、どうしても渡れない亀裂があったりショートカットしたい場所があったりすると、「橋を作るためのアリ」といった役割が定められていないにもかかわらず、グンタイアリは自らの体で橋を作ります。

軍隊アリが作る橋の様子がよくわかるムービーがこれ。

Army Ant Bridge


グンタイアリが持つ脳は非常に小さく、加えてほぼ盲目に近い状態であることから、他のアリと協力して精巧な集団運動を行うことはできません。ニュージャージー工科大学のサイモン・ガルニエ助教授は、「グンタイアリには群れを導く指導者もいなければ、『ここに橋を建築しよう』と宣言する建築家もいません」と述べ、グンタイアリが橋を架けるのは単純なアルゴリズムの働きによるものだとしています。

グンタイアリがどうやって橋を架けることを決定し、実際に橋を架けているのかを解明する鍵は「アリの視点になること」だそうです。まず、グンタイアリの進路上に亀裂や崖があった場合、亀裂に遭遇した群れの先頭付近では行進スピードが遅くなります。しかし、後ろから歩いてくるアリたちの行進スピードは緩くならないため、それまでと同じスピードで行進し続け、先に進めず先頭で止まっているアリたちの背中に乗り上げます。この瞬間、グンタイアリにインプットされている2つのアルゴリズムが働きます。

まず1つ目は、「背中に乗られたグンタイアリは動きを止める」というアルゴリズム。背中に他のアリが乗った時点で下のグンタイアリは動きを止め、橋の一部を形成します。上に乗ったアリは下のアリの上を歩いて行きますが、すぐに先へ進めなくなります。しかし群れの後ろからは次のアリが続々とやってきて、前方の先に進めないアリの上に乗ってくるので、上に乗られたアリはアルゴリズムに従ってフリーズ。これを繰り返すことでほんの少しずつ崖に橋が伸びていき、やがて反対側へ到達するというわけです。こうして出来上がった橋の上を、後から進んでくるアリたちが踏み越えていきます。

by Kasi Metcalfe

しかし、ショートカットのために橋を架けるとき、グンタイアリは必ずしも最短距離を選択しません。グンタイアリにはそもそも「ここに橋を架けたい」「ここが最短距離だ」と判断する脳がないため当然ですが、ここにもう1つのアルゴリズムが働いています。ガルニエ氏によれば、「グンタイアリはコストとメリットのトレードオフを、アルゴリズムで解決しています」とのこと。

橋を架けるために使われたアリは、餌を探すなど他の仕事に従事することができません。そのため、橋を架けられる場所にはすべて橋を架けるという方法では、「他のアリが橋の上を歩ける」というメリットと「橋になる以外の仕事ができない」というデメリットが釣り合わなくなります。グンタイアリは1つの橋につき通常50匹程度のアリを使い、1つの群れで同時に40~50ほどの橋を維持することもあるとのこと。2015年の研究によれば、グンタイアリは群れの20パーセントほどを橋として固定できますが、あまりにも短い距離短縮ではアリを固定するコストに見合わず、逆に橋が長すぎてもコストに見合いません。

橋になっているグンタイアリは「自分が橋になっている状態を維持するか否か」を、アルゴリズムによって選択しています。このアルゴリズムは非常に単純で、背中の上を通過するアリの交通量が一定のレベルを上回っていればそのまま橋になり続け、あるレベルを下回ると橋でいることをやめます。交通量が一定のレベルを下回るということは、あまりにも多くのアリが橋になっており、非効率な状態だということになるからです。グンタイアリの群れはそれぞれの個体が脳で思考しているわけではなく、決まったアルゴリズムに従うだけで橋を建設するコストとメリットを判断し、コストに見合った場合に橋を建設できるように進化を遂げているのです。

by Bernard DUPONT

グンタイアリの群れが非常にシンプルな2つのアルゴリズムに従い、橋を架けたり外したりしているという研究結果は、集団的なロボットを自律的な群れのように運用する際に使えるかもしれないとのこと。複数のロボットが相互に入り乱れる環境を制御するのは難しく思えますが、簡単なアルゴリズムを組み入れるだけで統治することが可能かもしれないのです。

・関連記事
熱帯に住むアリの一種が300万年前からコーヒーの木を「栽培」して共生してきたことが判明 - GIGAZINE

農薬と同じくらい効果的な「アリ」を使った害虫駆除とは? - GIGAZINE

アリの行動に学ぶ、より多くの脱出を可能にする非常出口の設計手法とは - GIGAZINE

シロアリが農業を人類よりはるか昔から行っていたことが判明 - GIGAZINE

想像を絶する超巨大構造のアリの巣の全貌を明らかにするムービー - GIGAZINE

in サイエンス,   生き物, Posted by log1h_ik