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開通してからわずか数時間で崩落した橋の設計者に18カ月の停職処分


カナダのサスカチュワン州サスカトゥーンから東に約300kmの距離にあるクレイトンで、2018年9月14日に「Dyck Memorial Bridge(ダイク記念橋)」が開通し、わずか数時間で崩壊してしまいました。このダイク記念橋を設計したスコット・ガラッチャー氏が、サスカチュワン州の設計技師規制協会から18カ月の停職処分を下されたと、カナダの公共放送であるCBCが報じています

Sask. engineer slapped with an 18-month suspension after designing bridge that collapsed hours after opening | CBC News
https://www.cbc.ca/news/canada/saskatchewan/engineer-18-month-suspension-bridge-collapsed-1.6936657


RM wanted cheaper option for bridge that fell: rural municipalities director | Regina Leader Post
https://leaderpost.com/business/rm-wanted-cheaper-option-for-bridge-that-fell-rural-municipalities-director/wcm/566c0447-e08f-4adb-881e-042a492923bc

地元メディアのRegina Leader Postによると、クレイトンの地方自治体は2017年秋にサスカチュワン州が管理する地方自治体道路プログラムを通じて資金提供を申請しました。翌年の1月にプログラム管理委員会により資金申請が承認され、ダイク記念橋の建設が決定。

そして、2018年9月14日にダイク記念橋が開通しました。しかし、ダイク記念橋は開通した当日に崩落。なお、橋の崩落による負傷者はいませんでした。


サスカチュワン州政府で地方自治体道路プログラムのエグゼクティブプロデューサーを担当するジェイ・マイヤー氏によると、同州は数カ月にわたりクレイトンの地方自治体に橋のエンジニアリング基準を提出するよう要求したそうですが、クレイトンから資料が提出されることはなかったそうです。

ダイク記念橋の建設にかかる総費用は110万カナダドル(約1億2000万円)となっており、そのうち最大75万カナダドル(約8100万円)が地方自治体道路プログラムからの資金で賄われる予定でした。しかし、最終的にプログラムからクレイトンに支払われることとなった助成金は35万カナダドル(約4000万円)です。


これについてマイヤー氏は、地方自治体道路プログラムが推奨したのは特定の橋の設計のみだったとしており、「この橋は我々のニーズを超えています。この橋は必要ありません」とクレイトンに説明したことを明かしています。

サスカチュワン州政府の交通省で広報を担当するダグ・ワカバヤシ氏によると、クレイトン地方自治体がダイク記念橋を建設するために使用したのは、「橋の建設で通常使用されるコンクリートや木の杭」ではなく「デッキを建設するために使用される杭」であったそうです。なお、ワカバヤシ氏は「我々の道路計画プログラムを通じて資金提供された橋の設計は安全であることを証明しなければいけないということをかなり一貫しています」とも指摘。加えて、サスカチュワン州政府は「地方自治体道路プログラムに基づく橋は高価だが安全でもある」と説明しています。

クレイトン地方自治体のデュアン・ヒックス氏によると、ダイク記念橋の建設を担当したのはCan-Struct Systemsで、崩落した橋の修復も同社が担当することになる模様。なお、橋の修復費用は34万カナダドル(約3700万円)程度になると試算されていました。


その後、2023年になってサスカチュワン州専門技術者・地球科学者協会(APEGS)の規律委員会が、3件の職業上の違法行為を理由にダイク記念橋の設計者であるスコット・ガラッチャー氏に対して18カ月の停職処分を下しました。

APEGSの規律委員会はダイク記念橋の崩落を「壊滅的な失敗」と表現しており、ダイク記念橋だけでなく複数のプロジェクトでのガラッチャー氏の不正行為を調査するための命令も発表しています。規制委員会によると、ガラッチャー氏は建設地の地質工学分析を行っておらず、らせん状杭基礎の適切な工学設計を行っていなかったと指摘しました。なお、ガラッチャー氏は他にも5つの橋での設計作業で懲戒処分を受けています。

また、規律委員会はガラッチャー氏の橋の設計について「橋の設計において不正確な表現を含む、設計情報の欠如が存在しており、その結果、規定で要求される最小荷重を支えるには不十分な5つの上部構造設計が生まれてしまった」と、橋が崩落した原因を説明しました。

記事作成時点ではサスカチュワン州外に居住し働いているというガラッチャー氏ですが、同氏はサスカチュワン州に戻りエンジニアとして働くことを希望しているそうです。なお、ガラッチャー氏に対して下された18カ月の停職処分は2022年6月8日から有効になっているため、同氏に対する停職処分は2023年12月に解けます。

ただし、復帰後もガラッチャー氏はサスカチュワン州の橋梁プロジェクトに従事することは5年間禁止されることとなるそうです。また、ガラッチャー氏は停職処分が明けてからも3年間はAPEGSの監督対象となり、3年間で5時間の検証可能な倫理トレーニングを受ける必要があるとのこと。


この他、ガラッチャー氏はAPEGSに調査費用として3万2000カナダドル(約350万円)、APEGSから科された罰金1万5000カナダドル(約160万円)を支払う必要があります。

なお、ガラッチャー氏はダイク記念橋の修復に自腹で25万カナダドル(約2700万円)を支払ったと証言しています。

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in メモ, Posted by logu_ii

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