サイエンス

なぜ「電気抵抗ゼロ=超伝導物質」というわけではないのかという理由を超伝導物質を研究している専門家が解説


韓国・高麗大学量子エネルギー研究センターの研究チームが「常温常圧超伝導を実現した」という論文を発表しました。論文が掲載されたのは査読前論文を掲載するarXivだったため、その真偽はまだはっきりとしていない状態ですが、多くの人が常温常圧超伝導に興味を持ったということで、オーストラリア・モナシュ大学マイケル・S・フューラー教授が「電気抵抗がゼロだからといって超伝導物質だとはいえない」ことについて、Xに情報をまとめてくれています。


超伝導とは、物質の電気抵抗がゼロになる状態のこと。一般に、金属の電気抵抗は熱すると大きくなり、冷やすと小さくなるため、低温で実現するものと考えられてきました。

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フューラー教授はまず「室温で超伝導体が存在できない理由はない」としつつ、「室温超伝導体をどう作ればいいかはわからない」と述べています。また、常温常圧超伝導体が存在するとしても、
フォノン媒介によるBCS機構は持たないとのこと。BCS機構とは1957年に提唱された超伝導の発生メカニズムで、フォノンとは従来型の超伝導との関わりが深い準粒子のこと。つまり、フューラー教授は常温常圧超伝導体は理論上存在しうるものの、それはこれまで特定されている典型的な超伝導体とは異なる仕組みによるものだろうと指摘しているわけです。


このため、超伝導は予期しない変わった物質から偶然見つけられることになると考えられます。ただし、偶然発見された超低抵抗状態がすべて超伝導とは限らないそうです。


前述の通り、超伝導とは物質の電気抵抗がゼロの状態のこと。つまり、「電気抵抗を測定してゼロであれば超伝導」……と言いたくなるところですが、実際にはそうではなく、「だまし」があるとフューラー教授は述べています。


このため、超伝導かどうかは「電気抵抗がゼロかどうか」ではなく、マイスナー効果交流磁化率など複数の要素で確認します。


それでもなお、自然界は研究者をだますことがあります。超伝導によく似た説明の難しい結果が予想外の高温になることもあって、しばしば「思わせぶり」と形容されたり、「未確認超伝導体」と呼ばれたりします。


以下は、室温超伝導にも思える、室温での反磁性を示した映像です。

Giant Diamagnetism in Au-Ag Nanostructures at Ambient Conditions - YouTube


この映像は信頼できる科学者が関わって行われた実験ですが、詐欺が疑われるような「超伝導」研究も行われているとフューラー教授は指摘しています。


こうした話は、当初は信頼性の高い話に思えるのですが、終わりがどうなったか、はっきりしないものが多々あり、「他の研究所で実験の再現が行われた」というニュースがないままに音沙汰なしとなる事例もあるとのことです。

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in サイエンス, Posted by logc_nt

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