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常温常圧超伝導体「LK-99」再現実験について東南大学のチームがマイナス163度で「抵抗ゼロ」を観測したと発表


2023年7月に韓国の研究チームが常温かつ常圧で超伝導状態になる物質「LK-99」に関する未査読論文を公開しました。LK-99が本当に超伝導体なのかを明らかにするべく世界中の研究機関が再現実験に取り組んでおり、2023年8月3日には中国・東南大学の研究チームが「LK-99が110K(約マイナス163度)で抵抗ゼロになることを確認した」とする未査読論文を発表しました。

Observation of zero resistance above 100° K in Pb10−xCux(PO4)6O
https://doi.org/10.48550/arXiv.2308.01192

LK99,110K零电阻观测成功_哔哩哔哩_bilibili
https://www.bilibili.com/video/BV1pM4y1p7u5/

電気の抵抗がゼロになる超伝導体はリニアモーターカーや量子コンピューターなどに活用されていますが、既存の超伝導体には「非常に低い温度まで冷却しないと抵抗がゼロにならない」という問題が存在しており、世界中の研究機関が少しでも高い温度で超伝導性を発揮する物質を開発しようと取り組んでいます。「少しでも高い温度」といってもマイナス200度前後という極低温クラスの話だったのですが、2023年7月に韓国の研究チームが発表したLK-99は「室温でも超伝導性を発揮する」とされていることから大きな話題となっています。

「室温かつ常圧で超電導状態になる物質」を開発したとする論文&ムービーが公開される - GIGAZINE


LK-99が本当に室温でも超伝導性を発揮するのであれば、「送電ロスのない理想的なエネルギー網を構築できる」「量子コンピューターの普及が近づく」といった計り知れないメリットをもたらすことになります。このため、LK-99の発表直後から世界中の研究機関がLK-99の再現実験に取り組んでおり、2023年7月31日には「再現したLK-99が超伝導性を示した」とするムービーも公開されています。

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新たに東南大学が公開した未査読論文では、合成したLK-99が110K(約マイナス163度)で抵抗ゼロを示したとされています。マイナス163度は非常に低い温度ですが、既存の超伝導体の転移温度と比べると高い温度と言えます。


ただし、超伝導体には抵抗ゼロという特徴の他に磁石の上にピタッと浮く「マイスナー効果」が生じるという特徴もあるのですが、東南大学の研究チームが合成したLK-99ではマイスナー効果を確認できなかったとのこと。

また、京都大学物理系研究室非公式VTuberの固体量子氏は「研究チームが公開したグラフを対数目盛から線形目盛に直すと超伝導転移に特徴的な急峻な変化が確認できない」として「単純に測定精度限界以下の抵抗になったと考えるのがよさそう」と指摘しています。

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in サイエンス, Posted by log1o_hf

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