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「室温かつ常圧で超電導が可能になる」技術でどのようなことが実現可能になるかについての議論が白熱中

by DFSB DE

2023年7月22日に提出された「常温でも超電導を実現する」という論文は、これまでの「特定の物質を冷やすと電気抵抗が0になる」という超電導の常識を覆すものでした。常温でも超電導が実現可能になった場合、どんなことが可能になるかについて、ソーシャルニュースサイトのHacker Newsで議論されています。

Ask HN: Room temperature superconductor: what to expect? | Hacker News
https://news.ycombinator.com/item?id=36930707


金属や化合物など、特定の物質を極低温まで冷やすことで生じる超電導は、基本的に-200度近い温度まで冷やさないと生じないような現象として知られていました。

そんな中、韓国の研究機関「Quantum Energy Research Centre」の研究チームが「室温かつ常圧での超電導」を実現したとする論文を2023年7月22日にプレプリントサーバーのarXivで発表しました。

「室温かつ常圧で超電導状態になる物質」を開発したとする論文&ムービーが公開される - GIGAZINE


また、科学雑誌のScienceは今回の室温超伝導技術について解説を行っています。

常温常圧で「超電導」になる物質を合成したとする論文について科学雑誌Scienceが解説 - GIGAZINE

by Julien Bobroff

今回の室温超伝導技術がもしも立証され、技術的利用が可能になった場合について、あるユーザーは「電子機器における効率的な動作の障害となっていた発熱の問題が解消され、CPUやGPU、メモリが従来よりも高速で効率的になります」と述べています。また、「長距離送電やMRI装置のコストが低下すること」や「核融合炉の実現が進む」可能性について述べています。

また、このユーザーはリニアモーターカーなどの磁気浮上式鉄道が室温超伝導技術によって、移動のための最も低コストな手段になることを期待しており、研究が進むにつれて、自家用車やトラックもリニアモーターカーになる可能性や、磁気レールに置き換えられた道路の可能性について言及しています。

室温超電導技術の確立によって、アフリカで発電した再生可能エネルギーをヨーロッパに届けるなど、世界中でやり取りできるグローバルな電力網を構築できることを期待するユーザーもいます。


また、室温超伝導技術を用いた小型で持ち運びが可能なfMRIが開発されることを期待しているユーザーは、「従来のfMRIで必要だった、巨大な液化ヘリウムによる冷却装置が不要になり、ヘルメットのような装置を装着するだけで、非常に高い解像度で脳活動を計測できる可能性があります」と述べています。

一方で持ち運び可能な「ポータブルMRI」について、あるユーザーは「人体を囲むのに十分な大きさの磁石と、その磁力に耐えうる材料が必要になる、非常に複雑なプロセスが必要になります」と述べ、現代の技術ではポータブルMRIの開発は困難であることを指摘しています。


さらに、今回の研究チームの発見について「今回の室温超伝導技術の成功は、外れ値や測定誤差にすぎず、過大評価されているようです」との厳しい意見を述べるユーザーや、「今回の研究結果に対して複数回の追試験が行われ、効果が実証されるまで、私は室温超伝導技術に期待していません」と述べるユーザーもいました。

しかし、あるユーザーは「今回の発見は突如現れた魔法の一部ではなく、将来的な室温超伝導技術研究に対する新しい出発点とマイルストーンです」と述べています。

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in サイエンス, Posted by log1r_ut

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