サイエンス

リニアにも活用される「超電導」のメカニズムは実はよく分かっていない


特定の物質を極低温状態にまで冷却すると、電気抵抗がなくなり高い導電性を備えた「超電導」と呼ばれる状態になることが知られています。超電導はリニアモーターカーやMRIなどに応用されているのですが、実は物質が導電性を獲得するメカニズムを説明できる単純な理論は見つかっていません。ミシガン大学の研究チームは、新たにスーパーコンピュータを用いて「従来の理論で超電導を説明できるのは、既知の物質の50%」という結果を導き出しました。

Mechanism of superconductivity in the Hubbard model at intermediate interaction strength | PNAS
https://doi.org/10.1073/pnas.2205048119

Quantifying the role of antiferromagnetic fluctuations in the superconductivity of the doped Hubbard model | Nature Physics
https://doi.org/10.1038/s41567-022-01710-z

U-M researchers untangle the physics of high-temperature superconductors | University of Michigan News
https://news.umich.edu/u-m-researchers-untangle-the-physics-of-high-temperature-superconductors/


超電導という物理現象は1900年代初頭に発見されたもので、その後1950年頃に「逆向きのスピンを持つ電子同士に引力(クーパー対)が生じることで、電流が自由に行き来できるようになる」という超電導のメカニズムを説明する理論が提唱されました。しかし、この理論が当てはまらない比較的高温で超伝導性を獲得する物質が複数発見されており、すべての物質における超電導を説明できる理論はいまだに確立されていません。

ミシガン大学の研究チームによると、超電導のメカニズムを説明するには電子とスピンの相互作用を知る必要があるとのこと。研究チームは実際に相互作用を求めるためのモデルを導き出し、スーパーコンピューターを用いて電子とスピンの相互作用を調査しました。


スーパーコンピューターを用いた調査の結果、既知の物質の約50%には「逆向きのスピンを持つ電子によって導電性を獲得する」という従来の理論が当てはまったとのこと。一方で、残り約50%の物質は従来の理論では説明できず、「電荷の揺らぎ」が影響している可能性が示されました。

研究チームは、「『超電導のメカニズムを説明する1つの単純な理論』が存在する理由はありません。驚くべきことに従来の理論はかなりの物質に当てはまりますが、すべてではありません」と述べています。また、研究チームは今回の研究結果が超電導のメカニズム解明に役立つことを期待しているとのことです。

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in サイエンス, Posted by log1o_hf

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