サイエンス

MITが核融合発電所に必要となる「超伝導電磁石の磁場強度」で世界記録を更新したと報告


マサチューセッツ工科大学(MIT)が2015年から民間企業と提携し進めていた「超伝導電磁石」の開発で、新たに史上最強の磁場強度を持つ超伝導電磁石の作成に成功したと報告しました。

MIT-designed project achieves major advance toward fusion energy | MIT News | Massachusetts Institute of Technology
https://news.mit.edu/2021/MIT-CFS-major-advance-toward-fusion-energy-0908

Fusion startup builds 10-foot-high, 20-tesla superconducting magnet | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2021/09/mit-backed-fusion-startup-hits-key-milestone-big-superconducting-magnets/

今回MITらが報告したのは、核融合発電の達成に必須となる「世界で最も強力な超伝導電磁石」を実現したという内容。核融合は2つの原子を加熱してプラズマにしてから融合させるという核反応の一種で、その過程でプラズマは1億度超という高温に達します。このレベルの高温においては固体状態を保ち続けられる物質は現状存在しないと考えられているため、現在開発が進んでいる核融合炉プロジェクトにおいては主にプラズマを閉じ込め続けるために「磁場で浮かす」という手法が採用されています。

核融合について:文部科学省
https://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/iter/019.htm

従来の手法では、数億度まで加熱されたプラズマを閉じ込め続けるためには機器自体が巨大になってしまうという問題がありました。しかし、MITと核融合系スタートアップのCommonwealth Fusion Systemsは、近年発見された20ケルビンで超伝導を示す希土類バリウム銅酸化物のコイルを動力源として、超伝導電磁石のサイズを高さ3メートル・縦横1.5メートルに収めつつ、目標としていた高温超伝導核融合磁石としては史上最強となる磁場強度「20テスラ」を達成したと報告しました。

Unlocking SPARC: HTS Magnet for Commercial Fusion Applications - YouTube


今回の超伝導電磁石開発プロジェクトは2018年にスタートしており、当時の発表では「次の3年で完成させる」とされていたため、当時の見通し通りにプロジェクトが進行している模様です。

核融合発電所を15年以内に実現することを目指すMITの新たな研究がスタート - GIGAZINE


当時の発表においては、最終目標である核融合発電所の完成は15年以内とのことだったので、今後も順調な進捗が続くならば、核融合発電所は2030年までに完成します。

今回の研究は核融合発電所の構築の前段階にあたる概念実証的なものですが、MITらは今回の超伝導電磁石完成をもって「最大の技術的ハードルを越えた」とコメント。水のみを燃料とすることから核融合を「究極のクリーンエネルギー」と評しつつ、核融合発電所の実現に向けて最も重要なマイルストーンの1つを達成したと語っています。

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in サイエンス,   動画, Posted by darkhorse_log

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