サイエンス

核融合実験炉「ヴェンデルシュタイン7-X」が改良され過去の17倍の目標値に到達


プラズマを用いエネルギーを生み出す技術を開発するために設置された核融合実験炉「ヴェンデルシュタイン7-X」が新たなマイルストーンに到達し、高温のプラズマを8分間維持することに成功しました。

Power plasma with gigajoule energy turnover generated for eight minutes
https://phys.org/news/2023-02-power-plasma-gigajoule-energy-turnover.html

ヴェンデルシュタイン7-Xは超高温のプラズマを閉じ込める「磁場閉じ込め方式」と呼ばれる手法の実験を可能とする核融合炉で、2015年10月に完成して以来、これまでに数多くの実験が行われています。


この核融合炉は2022年の夏に3年間の改良工事が終了しており、壁面冷却装置と加熱装置が見直された結果、従来の2倍の電力をプラズマの生成のために供給できるようになりました。

改良されたヴェンデルシュタイン7-Xで新たにプラズマを生成・維持する実験が行われたところ、平均加熱電力「2.7メガワット」、エネルギー回転率「1.3ギガジュール」で、8分間の放電に成功したとのこと。実験の様子を赤外線カメラで撮影した様子が、YouTubeに公開されています。

Wendelstein 7-X: 8 min Plasma with 1.3 GJ Energy Turnover (IR video) - YouTube


エネルギー回転率は熱量に放電の持続時間をかけたものと定義されています。大きなエネルギーを連続的にプラズマに結合させ、その結果生じる熱を除去することができれば、初めて核融合プラズマを用いた発電所の運転が可能になるそうです。今回記録した1.3ギガジュールという数値は、ヴェンデルシュタイン7-Xが記録したエネルギー回転率としては過去最高の数値であり、他の核融合実験炉で記録された数値としても世界最高値の一つです。改良前のヴェンデルシュタイン7-Xの加熱電力ははるかに低く、エネルギー回転率も最大75メガジュールで、最大100秒ほどの放電しか実現することができませんでした。

ヴェンデルシュタイン7-Xを管轄するマックス・プランク研究所トーマス・クリンガー教授は「私たちは現在、より高いエネルギー値への道を探っています。その際、施設に過負荷をかけて損傷させないよう、一歩一歩進めていかなければなりません」と述べました。研究者らは数年以内にヴェンデルシュタイン7-Xのエネルギー回転率を18ギガジュールまで上げ、30分間プラズマを安定させる計画を打ち立てています。

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in サイエンス, Posted by log1p_kr

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