サイエンス

自分の腎臓・肝臓・骨髄・角膜の買い手をSNSで募集する人がイランで増加中


中東のイランでは、人権侵害や核開発問題を受けてアメリカやその他の国家などが経済制裁を行っており、その結果高いインフレ率や失業率が問題となっています。そんなイランでは経済的困難な状況を乗り切るためにSNSで自身の腎臓や肝臓、骨髄、角膜などを販売していることが問題となっています。

Iranians sell kidneys on Instagram to survive economic hardship
https://www.thenationalnews.com/mena/2023/07/14/iranians-sell-kidneys-on-instagram-to-survive-economic-hardship/


アラブ首長国連邦の英字日刊紙・The Nationalによると、イランの首都・テヘランヴァリアスル広場近くの通りには、肝臓や腎臓、角膜といった売りたい臓器のリストの横に自身の血液型や年齢、電話番号を記載した貼り紙が多数掲載されているとのこと。

偽の土地に絡む建設取引で資産を失った元建設作業員のキーハンさんも、臓器売買に手を出しているイラン人のひとり。腎臓をTwitterやInstagram、Telegramで販売しているキーハンさんによると、SNS上の臓器販売ネットワークには数万人規模のユーザーがいるとのことで、「私の腎臓を買いたいと連絡してきた人の数は数え切れません」と話しました。キーハンさんは最終的な取引価格が決定次第、病院で検査を受けるとのこと。

キーハンさんは「本当につらい決断でしたが、選択の余地はありませんでした。イランで自身の腎臓や肝臓を売っているような人は、水や電気などのライフラインに支払うお金もありません」と述べています。


世界で唯一腎臓を売買することが合法なイランでは、1980年以降、移植を求める人とマッチングしたドナーに対して1000万リアル(約3万2885円)の固定金と健康保険の補助金を提供していますが、より良い取引価格を求めて闇市場での売買を行う人が後を絶ちません。

イランの経済状況について、ドイツ・マールブルク大学の経済学者のモハメド・レザ・ルザネガン氏は、イランでは2011年以降、全世帯のうち約10%の世帯が貧困に陥っていると指摘しています。また、2023年7月までの数カ月でインフレ率が49%を突破した可能性が高いことも報じられました。


記事作成時点で39歳のキーハンさんは「借金を抱えて人生が崩壊しかけている私に対して、家族は同情してくれるものの、実際には何もしてくれません」と悲観。また「私は4年以上臓器を売ろうと頑張ってきましたが、1度も臓器が売れたことはありません。それでも、腎臓を売るのは私にとって最後の手段です」と述べています。

イランに住むシマさんは、経済的な事情から自身の腎臓をTelegram上で販売しています。販売の理由についてシマさんは「私の弟や妹に、お金の心配をせずに学校に行って勉強してもらいたいからです」と述べています。


また、失業による生活の困窮からTelegramで肝臓や腎臓、骨髄を売っているモハメッドさんは「ほかに選択肢がありませんでした」と語っています。

一方で世界保健機関(WHO)は、経済的事情による臓器売買に反対の立場を示しており、臓器や体内組織の売買はすべて禁止すべきだと主張しています。

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in サイエンス, Posted by log1r_ut

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