ダークマターの謎を解き明かすことが期待される「ユークリッド宇宙望遠鏡」はどのようにダークマターを調査するのか?
欧州宇宙機関(ESA)が2023年7月1日(土)に打ち上げを予定しているユークリッド宇宙望遠鏡は、宇宙の質量の25%を占めているといわれる謎の物質「ダークマター」の正体を明らかにすることが期待されています。ユークリッド宇宙望遠鏡が一体どのようにダークマターを調査するのかについて、イギリスの大手新聞社であるThe Guardianが解説しています。
Scientists hope Euclid telescope will reveal mysteries of dark matter | European Space Agency | The Guardian
https://www.theguardian.com/science/2023/jun/18/scientists-hope-euclid-telescope-will-reveal-mysteries-of-dark-matter
ダークマターは、「観測可能な物質から推定される質量では、回転する銀河が恒星を引き留めるのに十分な重力を得られない」という研究結果に基づき、光学的に直接観測はできないものの存在しているはずだと考えられている正体不明の物質です。主流の仮説では、宇宙の約25%がダークマターで構成されており、70%は宇宙の膨張を加速していると考えられているダークエネルギー、残り5%が原子など既知の物質であるとされています。
ダークマターについては、「5次元に移動できる素粒子ではないか」「ほかの物質をダークマターに変えて増殖する物質ではないか」「負の質量を持つDark fluid(暗黒流体)の一部ではないか」などさまざまな説が提出されている一方で、「ダークマターは存在しない」と主張する研究者も存在し、依然としてダークマターの正体は謎に包まれています。
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そんな中、ESAは10億ユーロ(約1550億円)の予算を投じたユークリッド宇宙望遠鏡を用いて、ダークマターとダークエネルギーの謎について解き明かそうとしています。イギリス・エディンバラ大学の天体物理学教授であるアンディ・テイラー氏は、「ダークマターやダークエネルギーの性質が謎のままであれば、宇宙を理解しているとは言えません。だからこそ、ユークリッド宇宙望遠鏡はとても重要なのです」と述べました。
本来であれば、ユークリッド宇宙望遠鏡は2022年中にロシアのソユーズロケットを使用して打ち上げられる予定でした。しかし、ロシアのウクライナ侵攻によってESAがロシアの宇宙開発機関であるロスコスモスとの契約を終了し、新たにイーロン・マスク氏が率いるSpaceXと契約を締結したことで計画は延期されました。SpaceXのファルコン9ロケットを使用したユークリッド宇宙望遠鏡の打ち上げは、2023年7月1日に実施される予定です。
ユークリッド宇宙望遠鏡は打ち上げ後、約1カ月かけて地球から150万km離れた第2ラグランジュ点まで移動するとのこと。第2ラグランジュ点は太陽・地球・月を背後にして深宇宙を観測することが可能であり、NASAのジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡も同地点に配備されています。
ダークマターは光を放出・反射・吸収しない粒子で構成されている可能性が高いとみられており、高性能な宇宙望遠鏡であっても直接観測することはできません。しかし、ユークリッド宇宙望遠鏡はダークマターの質量によって生じる「重力レンズ」という効果を捉えることで、ダークマターを理解できると期待されているとのこと。
重力レンズとは、質量の大きな物質による重力場を通る際に光が屈折する現象のことであり、恒星や銀河などが発する光の進行はこの影響を受けています。ダークマターには質量があると考えられているため、ユークリッド宇宙望遠鏡が撮影した数百万もの銀河の画像を基に、ダークマターの質量による重力レンズ効果を分析することが可能です。
ダラム大学のマチルド・ジュザック教授は、「ダークマターが作り出す重力レンズは、ダークマターが何でできているのかを教えてくれるでしょう。ダークマターが軽い粒子でできている場合と、非常に大きな粒子でできている場合は、それぞれ別の種類のレンズが生成されます。この情報は、地球上におけるダークマター粒子の探索に役立ちます」と述べました。
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