ダークエネルギーの源が「ブラックホール」である可能性を示す最初の糸口が見つかる
宇宙空間に存在するとされる「ダークエネルギー」については、星や銀河の観測から存在が推測されているものの、それが何であり、どこから来るのかは分かっていません。新たな研究により、宇宙の大部分を構成する謎のエネルギーは「ブラックホール」が説明してくれる可能性があることが分かりました。
A Preferential Growth Channel for Supermassive Black Holes in Elliptical Galaxies at z ≲ 2 - IOPscience
https://doi.org/10.3847/1538-4357/acac2e
Observational Evidence for Cosmological Coupling of Black Holes and its Implications for an Astrophysical Source of Dark Energy - IOPscience
https://doi.org/10.3847/2041-8213/acb704
Scientists find first observational evidence linking black holes to dark energy | University of Michigan News
https://news.umich.edu/scientists-find-first-observational-evidence-linking-black-holes-to-dark-energy/
Black holes may be the source of mysterious dark energy that makes up most of the universe
https://theconversation.com/black-holes-may-be-the-source-of-mysterious-dark-energy-that-makes-up-most-of-the-universe-199831
人間の身近な世界を構成している物質(マター)は宇宙に存在するすべてのもののわずか5%にすぎません。残りの約27%はダークマターで、光を放出したり反射したり吸収したりしない、通常の物質の影のような存在で、宇宙の大部分を占める約68%はダークエネルギーであると考えられています。
ミシガン大学の物理学教授であるグレゴリー・タルレ氏らが中心となって進めた研究では、ブラックホールの成長が宇宙の膨張と関連しており、ブラックホールにダークエネルギーの一種である「真空のエネルギー」が含まれているかもしれないという考えが示されました。
海外メディアのThe Conversationによると、この考えは特に新しいものではなく、1960年代から積極的に議論されていたとのこと。しかし、今回の研究においては、宇宙が膨張するにつれて真空のエネルギーが時間とともに増加すると仮定され、ダークエネルギーがこれにどれだけ起因しているのかが計算されたため、ブラックホールとダークエネルギーを関連付ける初めての調査結果が報告されたとして注目されています。
タルレ氏らは銀河の中心にある超巨大ブラックホールに着目し、観測結果を過去と現在で比較しました。ブラックホールの質量が過去90億年にわたって変化し続けていることは先行研究で明らかになっていましたが、タルレ氏らが変化の過程を調べたことにより、現在のブラックホールは90億年前に比べて7~20倍へと質量を増していたことが判明します。
しかし、比較対象となったブラックホールは周囲の物質を吸収し尽くした後であったため、通常のプロセスでは質量の増加を説明できません。そこでタルレ氏らは、これらのブラックホールに真空のエネルギーが含まれており、宇宙の膨張と「結合」しているため、宇宙が膨張するに従って質量も増加したのではないかとの説を提唱しました。
タルレ氏は「もし結合が確認されれば、ブラックホールは決して我々の宇宙から完全に切り離されることはなく、遠い未来まで宇宙の進化に大きな影響を及ぼし続けることを意味します」と述べました。
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