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テレビ・映画業界の作家が賃金上昇を訴える「WGAストライキ」とは?

by ChrisGoldNY

アメリカの脚本家を代表する組織であるアメリカ脚本家組合(WGA)の東西支部は、映画製作者協会(AMPTP)との公正な賃金の要求を訴える6週間の交渉の末、2023年5月1日にストライキの呼びかけを発表しました。作家の大規模なストライキは2007年に100日間続いたもの以来で、ゴールデンタイムのテレビ番組の短縮や、映画制作の失速、スタッフの賃金や業界収入などについて交渉が続けられるほか、人工知能(AI)の使用を規制する訴えなども含まれています。

Hollywood writers are on strike. Here’s what that means for your favourite TV shows. | Mashable
https://mashable.com/article/hollywood-writers-strike-what-it-means


Hollywood writers are fighting the studios on AI, but not for the reason you think | Mashable
https://mashable.com/article/hollywood-writers-strike-ai


How to donate to those impacted by the writers' strike | Mashable
https://mashable.com/article/how-to-support-wga-writer-strike


From mini rooms to streaming, things have changed since the last big writers' strike
https://www.npr.org/2023/05/03/1173439467/writers-guild-strike-2023-comparison-2007

WGAに所属する脚本家や作家たちが主導となり、2023年5月2日よりストライキを行うことを発表しました。東部WGAの拠点であるニューヨークや、AMPTPの拠点であるロサンゼルスの主要なスタジオの外で公正な取引を目的とした集団交渉が行われています。WGAは「私たちは公正な取引を行うための交渉に臨み、一定の成果をあげることができましたが、作家が直面している存亡の危機を考えると、私たちの提案に対するスタジオ側の対応はまったく不十分でした」とストライキの理由について述べています。


WGA交渉委員会の声明では、フリーランスの立場で単発・短期の仕事を請け負う働き方であるギグエコノミーについて触れ、「組合労働者の内部にギグエコノミーが生まれており、彼らが今回の交渉で不動の姿勢を貫いています。ギグエコノミーの姿勢により、テレビでの週ごとの雇用が保証されなかったり、お笑いコメディバラエティで安価な日当が設定されたり、脚本家の無料仕事が増加したり、AIに関する妨害に至るまで、執筆という職業の価値を下げています」と非難しています。


また、WGAの提案では「ライターの基本報酬など組合の最低限の基本合意を示したMinimum Basic Agreement(MBA)下にあるプロジェクトでは、AIの使用を規制する」ことも主張しています。「AIの使用」とは、AIが文学的な資料を書いたり修正したりするほか、MBA下にある資料をAIのトレーニングに使用することも含んでいます。AMPTPはこれに対し、「技術の進歩について話し合う年次会議を提供する」という形で応えており、直接的な提案の合意は拒否しています。AIが脚本家の生計を脅かす可能性について、ドクター・ストレンジブラック・フォンなどの脚本で知られるC・ロバート・カーギル氏は、「AIのコンテンツにより脚本家の作品が置き換えられることは、当面の恐怖ではありません。脚本家がAIのコンテンツを書き直すという仕事を低賃金で課せられることが、WGAが問題視してAMPTPが望んでいることです」と語っており、Mashableの取材に対しカーギル氏は「まだこのような仕事は行ったことありませんが、遠くない将来起きると考えています」と述べています。


一方で、AMPTPが発表した声明では、「WGAに対して、報酬の増額とストリーミング関連の改善を含めた提案を提示しました。しかし、WGAは主な問題点を『強制的な人員配置』と『雇用期間』に求め、まだ交渉が完了していません。引き続き議論を続けて行きたいです」と述べており、WGAとAMPTPの主張には大きな隔たりがあると見られています。

新たな合意に達するまで、WGAに所属する1万人以上の作家はストライキルールに従います。そのため、ストライキが終わるまで、テレビや映画の脚本家は新しいものを書かず、既存のプロジェクトの作業をやめ、新しいプロジェクトの交渉に参加しないことが宣言されています。海外ドラマ「グッド・オーメンズ」の脚本に参加するニール・ゲイマン氏は「『グッド・オーメンズ2』の脚本は完成して提出済みです。しかし、私が望んでいたように、それを宣伝することはできないかもしれません」とツイートしています。


16年前に起きた2007年の大規模なストライキではロサンゼルスに限っても20億ドル(当時約2400億円)以上の損失が出たなど、業界全体で大きな影響がありました。その他、当時制作された「プリズン・ブレイク」などの人気ドラマがシーズンを短縮されて放映されたなど、大規模な作品への影響も発生したため、今回のストライキでもテレビや映画の開発プロセスへの影響が懸念されています。ジョージア大学のケイト・フォートミュラー准教授は、ナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)の取材に対し「今回のストライキは、ストリーミングサービスが主要なメディアになった近年の傾向が強く影響しているため、長期にわたる可能性があり、最も規模の大きいストライキの一つになる恐れもあります」と述べています。

WGAメンバー以外で交渉を支持する人などに対し、一部のWGAメンバーは業界全体の回復力基金であるEntertainment Community Fundへの寄付も呼びかけています。基金は映画や演劇、テレビ、音楽やラジオ分野で働く全ての人に、社会サービスや財政支援、住宅サポートなどを含む一連のプログラムを提供しているそうです。

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in メモ, Posted by log1e_dh

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