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「仮想iPhoneを動かせるiOSシミュレーターはフェアユースの範囲内で著作権を侵害していない」という判決が下る


セキュリティ企業のCorelliumが開発するiOSシミュレーターの「CORSEC」について、アメリカの第11巡回区控訴裁判所が「著作権法のフェアユース原則によって保護されている」として、著作権侵害に当たらないという判決を2023年5月8日(月)に下しました。

202112835.pdf
https://media.ca11.uscourts.gov/opinions/unpub/files/202112835.pdf


Apple Fails to Fully Reboot iOS Simulator Copyright Case (1)
https://news.bloomberglaw.com/ip-law/apple-fails-to-revive-copyright-case-over-iphone-ios-simulator


CORSECはCorelliumが開発するソフトウェアで、ウェブブラウザを介して仮想的なiPhoneを動作させることができます。Corelliumは「当社の製品はiOSの正確なコピーであり、脆弱性のテストに最適です」とうたってCORSECを販売していましたが、2019年8月にAppleが「CORSECはUI・アイコン・ソースコードに至るまでiOSのコピーである」と主張し、Corelliumを著作権侵害で訴えました。

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Corelliumは一貫して「iOSのUI・アイコン・ソースコードをコピーした目的はあくまでもセキュリティ研究のみであり、フェアユースの基準のもとでは問題ない」と主張していました。実際にCORSECは主にセキュリティ研究者や連邦政府機関、防衛請負業者によって使われており、本来のiOSにはない機能も搭載されていました。

2020年12月にはフロリダ州南部地区地方裁判所が「Corelliumの製品はフェアユースとして適格であり、著作権侵害には当たらない」という判決を下し、Apple側が敗訴。その後、Appleはデジタルミレニアム著作権法(DMCA)に違反しているという点で再びCorelliumを訴えましたが、これについては裁判の開廷直前にAppleとCorreliumが和解に至っています。

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Apple側の控訴による第2審となる今回の裁判では、CORSECによるiOSのコピーが、アメリカの著作権法第107条に規定があるフェアユースに当たるかどうかが争点となりました。さらに、1994年の「プリティ・ウーマン事件」最高裁判決で、「最初の作品を新たな表現、意味又はメッセージで変更して、それ以上の目的又は別の性格を持つ何か新しいものを付加する」という変形的使用(transformative use)であれば、商業使用であってもフェアユースと認められる余地があるという法解釈が示されており、CORSECが変形的使用にあたるかどうかも検討されています。

第11巡回区控訴裁判所は、「CORSECを使うことで、セキュリティ研究者がiOSのプロセスをリアルタイムで監視し、実験を実行できる。こうした機能が研究者を支援し、彼らが新しい方法で仕事をすることを可能にしていることに異論はない」「CORSECは重要なOSのセキュリティ研究を可能にすることで、科学的進歩を促進するものである」と述べ、CORSECにおけるiOSコードのコピーは変形的使用に当たると判断しました。


Appleの広報担当者は判決についてのコメントを控えています。一方、Corelliumを支援していたシンクタンク・Public Knowledgeのシニアポリシーカウンセルを務めるMeredith Rose氏は「第11巡回区控訴裁判所は、iOSのように大部分が機能するソフトウェアを、著作権法に抵触することなく、新しく価値のあるツールを作るために使用することができるということに正しく同意しました」と述べ、判決を歓迎しています。

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in モバイル,   ソフトウェア, Posted by log1i_yk

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