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大手出版社に著作権侵害で訴えられた「電子図書館」を電子フロンティア財団が支持、デジタル世界の図書館は成り立つのか議論が白熱


ウェブサイトなどのさまざまなデジタルメディアを記録・保存して公開する非営利団体のインターネットアーカイブは、無料で140万冊のデジタル書籍を閲覧できる電子図書館を公開したことで、2020年6月に複数の大手出版社から著作権侵害として訴えられました。この訴訟に関して2022年7月、デジタル社会における言論の自由を保護するための非営利組織である電子フロンティア財団が、インターネットアーカイブの申し立てを支持し「デジタル世界の図書館を維持する」と主張する文書を提出しました。

Publisher’s lawsuit seeks to take down Internet Archive’s digital lending library - World Socialist Web Site
https://www.wsws.org/en/articles/2022/07/14/cucd-j14.html

Tell HN: Internet Archive is facing a Big 4 Publishers lawsuit | Hacker News
https://news.ycombinator.com/item?id=32141358

インターネットアーカイブは物理的な本をデジタルスキャンしたデータを貸出すプログラムを10年にわたって行ってきましたが、このプログラムで借りられる本は基本的に一冊のみで、一定の期間で返却する必要があったり、デジタル書籍でありながら現実の図書館のように「貸出中」として返却待ちをする必要がありました。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大に伴ってほとんどの図書館が休館したこともあり、インターネットアーカイブは2020年3月に無料で約140万冊のデジタル書籍を最大10冊まで待機なしで読める「National Emergency Library(国立緊急図書館)」を公開しました。この中には著作権が切れていない本も多く無許可で貸出されていたことから、4つの大手出版社が「インターネットアーカイブの電子図書館は著作権を侵害している」とニューヨーク州南部地区連邦地方裁判所に訴えました。

「無料で約140万冊の本が読めるインターネットアーカイブの電子図書館は著作権侵害だ」と出版社が訴える - GIGAZINE


訴訟を受けてインターネットアーカイブの運営者であるブリュースター・ケール氏は「インターネットアーカイブの電子図書館は、通常の図書館と同様に図書館として本を貸し出しているだけです」とコメントしていました。また、この大手出版社による訴訟の動きは「出版社がパンデミックを利用して図書館を『読書サービス』化し、利益を搾り取ろうとしています」という指摘も受け、図書館の意義が訴訟によって揺らぐ懸念も上がっていました。

出版社によって「文化を後世に残す」「誰でも自由に本が読める」という図書館の偉大さが失われようとしている - GIGAZINE


インターネットアーカイブはこの訴訟について、「図書館による本の貸出を犯罪化する試みである」として出版社の主張を棄却する申し立てをニューヨークの連邦裁判所に提出。さらに、2022年7月8日には電子フロンティア財団がインターネットアーカイブの申し立てを支持する概要を連邦裁判所に提出し、「インターネットアーカイブの管理されたデジタル貸出プログラムは、著作権法の対象となるフェアユースの範囲内であり、デジタル世界の図書館貸出サービスは維持可能です」と主張しています。

電子フロンティア財団は「問題のタイトルがオンラインライブラリから削除されたときに他の本に比べて印刷物の売り上げがわずかに悪化した」という事実を元に、電子図書館が実際の本の市場に害を及ぼさないことを主張し、訴えを起こしている大手出版社が電子図書館により利益を失っていないと示しました。

出版者の訴訟は「図書館貸出の原則を攻撃している」としてしばしば批判を受けていますが、Hacker Newsではこの件に対し同様に電子図書館を支持する声の一方で、「インターネットアーカイブは著作権法的に不誠実な面があり、実用性によって合理的であると認められているのみです」「法を破ることによって法を変えることは、歴史上で起こってきたことではあっても、無謀な計画だと思います」などインターネットアーカイブに対して批判的な意見も集まっており、デジタル図書館と著作権法に対して議論が白熱しています。

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