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「無料で約140万冊の本が読めるインターネットアーカイブの電子図書館は著作権侵害だ」と出版社が訴える


ウェブサイトや音楽などさまざまなデジタルメディアを記録・保存し、ウェブページのアーカイブ閲覧サービス「ウェイバック・マシン」を運営する非営利団体のインターネットアーカイブは、2020年3月に無料で約140万冊のデジタル書籍を読むことができる「National Emergency Library(国立緊急図書館)」を公開しました。この動きに対して複数の大手出版社が、「インターネットアーカイブの電子図書館は、産業規模での意図的なデジタル著作権侵害である」として訴訟を起こしました。

publishers-lawsuit-internet-archive.pdf
(PDFファイル)https://regmedia.co.uk/2020/06/01/publishers-lawsuit-internet-archive.pdf

Publishers sue to shut down books-for-all Internet Archive for 'willful digital piracy on an industrial scale' • The Register
https://www.theregister.com/2020/06/01/publishers_sue_internet_archive/

Publishers sue Internet Archive over Open Library ebook lending - The Verge
https://www.theverge.com/2020/6/1/21277036/internet-archive-publishers-lawsuit-open-library-ebook-lending


インターネットアーカイブの電子図書館には合計で約140万冊もの本が含まれており、ユーザーは1度に最大10冊まで借りてオンラインで読むことが可能。どのように無料で本を読むことができるのかは、以下の記事を読むとわかります。

無料で読める140万冊の本をインターネットアーカイブが公開 - GIGAZINE


電子図書館の本には著作権が切れているものもありますが、2000年代に出版された本も数十万冊単位で存在しており、中には「ハリー・ポッター」シリーズや、ロード・オブ・ザ・リング三部作なども含まれています。以前からインターネットアーカイブは物理的な本のデジタルスキャンを貸し出してきましたが、新型コロナウイルス感染症の流行に伴う都市封鎖を受け、自宅待機中の人々に読書や学習の機会を与えるため、電子図書館のオープンに踏み切ったとのこと。

しかし、インターネットアーカイブは図書館として運営されているものの、一般的な図書館が使用する著作権の回避制限を用いていません。インターネットアーカイブは出版社とライセンス契約を結ぶのではなく、単に物理的な本をスキャンしてデータ化し、そのデータを貸し出しています。インターネットアーカイブは「Controlled Digital Lending(制御デジタル貸出)」という独自の理論を用い、電子図書館は著作権を侵害していないと主張していましたが、ついに大手出版社が法的対処に乗り出しました。


2020年6月1日、アシェット・ブック・グループペンギン・ランダムハウスジョン・ワイリー・アンド・サンズハーパーコリンズという4つの大手出版社が、「インターネットアーカイブの電子図書館は著作権侵害である」とニューヨーク州南部地区連邦地方裁判所に訴えました。

出版社のグループは2020年4月にも、同様の懸念を提起する書簡を公開していました。出版社らは「インターネットアーカイブはこれらの本について何の権利も持たず、出版社や著者の同意なしで無差別に配布する権利もない」と主張。アメリカ出版協会もインターネットアーカイブの活動について、「偽善の極み」であり、「著作権を傷付ける皮肉な遊びだ」と非難しています。

インターネットアーカイブが主張する制御デジタル貸出という理論についても、出版社らは「全くのでっち上げ」だと指摘しており、「インターネットアーカイブは法的枠組みの外側で機能するだけでなく、悪質かつ不正です」と述べています。インターネットアーカイブは本の出版に何も寄与していない点を出版社は指摘し、「要するに、被告は出版社が本に対して行った投資を利用するだけであり、他の人が設計した仕事にタダ乗りしています」と主張しました。


出版社の訴えに対し、インターネットアーカイブの運営者であるブリュースター・ケール氏は短いブログ記事を投稿。「私たちは今朝、4つの商業出版社がインターネットアーカイブを訴えているのを知り、失望しました」とコメントしています。

Four commercial publishers filed a complaint about the Internet Archive’s lending of digitized books - Internet Archive Blogs
https://blog.archive.org/2020/06/01/four-commercial-publishers-filed-a-complaint-about-the-internet-archives-lending-of-digitized-books/


ケール氏は、インターネットアーカイブの電子図書館が通常の図書館と同様に、図書館として本を貸し出しているだけだとコメント。学校や公共の図書館が閉鎖されている中、保護されたデジタル化されたバージョンの貸し出しを止めても誰の利益にもならないとケール氏は主張し、「この問題が迅速に解決されることを願っています」と述べました。

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in ネットサービス, Posted by log1h_ik

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