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WHOが新型コロナウイルスの「緊急事態宣言」を終了、パンデミックを通して得られた知見とは?


世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルスの感染拡大を受けて出していた「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」宣言を終了すると発表しました。日本を含む多くの国で猛威を振るった新型コロナウイルスのパンデミックを経て得られた知見を、スウォンジー大学の行動科学者であるサイモン・ニコラス・ウィリアムズ氏がまとめています。

COVID is officially no longer a global health emergency – here's what that means (and what we've learned along the way)
https://theconversation.com/covid-is-officially-no-longer-a-global-health-emergency-heres-what-that-means-and-what-weve-learned-along-the-way-205080


2023年5月5日、WHOは2020年1月30日に宣言した「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を終了すると発表しました。しかし、すでに多くの一般市民にとって新型コロナウイルスは過去のものとなっています。例えば、イギリスでは「国が直面している主要な問題は何だと思いますか?」という世論調査において、新型コロナウイルスが全く言及されていません。ウィリアムズ氏が他の行動科学者と共に行った追跡調査においても、2022年夏の時点で多くの人が新型コロナウイルスのパンデミックを「遠い過去の記憶」として認識していると語っているそうです。

◆古い習慣はなかなか消えない


新型コロナウイルスのパンデミックで一般市民が身につけた新しい習慣には、「マスクの着用」や「体調が悪くなったら仕事を休む」といったものがあります。しかし、こういった習慣が古い習慣に取って代わることはなかったと、ウィリアムズ氏は指摘。

例えばイギリスでは、マスクの着用者は一貫して減少しており、2023年4月に実施された調査によると「最近マスクを着用した」と回答した成人は6人に1人未満であったことが明らかになっています。さらに、イギリスでは「ソーシャルディスタンスについてはずっと前に姿を消していました」とウィリアムズ氏は述べています。

「新型コロナウイルスのパンデミックは、特に自分自身や他人の安全を守るために行動を変えることをいとわない人がどれだけいるかを教えてくれました。パンデミックの最盛期、どんなに困難であってもほとんどの人が新しいルールに従い行動しました」とウィリアムズ氏。


人々のパンデミックへの適応およびパンデミック前の習慣への回帰について、ウィリアムズ氏は「社会的合図や社会的規範が行動にとっていかに重要であるかを示しています。マスクを着用したり、他人との距離を置いたりすることは習慣であり、ソーシャルディスタンスをとっている人の写真やイラストを見るなどして、自動的に引き起こされるものでした」と語っています。

◆人との交流がもたらす効果


新型コロナウイルスのパンデミックは社会的なつながりや、物理的な接触がいかに重要なものであるかも実証しています。ストレスやウェルビーイングを生物学的、心理的、社会的要因の産物として捉える社会的安全理論によれば、新型コロナウイルスは「人間をたくましくし、私たちを生き生きとさせる社会基盤」に対する脅威になったとされています。

実際、新型コロナウイルス対策としてロックダウンが実施された際には、多くの人の生活満足度および幸福度が低くなったと報告されており、これは人々が社会的な交流を復活させたのちに回復しています。

◆緊急事態はまだ終わっていない


WHOの緊急事態宣言が終了するにあたり思い出すべきなのが、2020年以降、新型コロナウイルスにより約700万人の命が失われたという点です。さらに、一部の人々、特に臨床的に脆弱な人々にとって、新型コロナウイルスの緊急事態はまだ終わっていないということも認識しておく必要があるとウィリアムズ氏は語っています。

新型コロナウイルスは依然として世界中で毎週何百万人もの人々が感染しており、何千人もの人々が死亡する原因となっています。また、新型コロナウイルスの影響で何億人もの人々が長期的なケアを必要とするようになりました。

ウィリアムズ氏は「将来的に個人の回復力に頼ることから、組織の回復力を構築することへと移行する必要があります。我々は皆、新型コロナウイルスやその他の呼吸器系ウイルスから、自分や周囲の人を守るための対策を講じることができます。しかし、公衆衛生上の緊急事態を防ぐ責任は、一般市民にだけ委ねるべきではありません」と述べ、政府機関や企業、保健当局が今できる行動を正しく行うことで、将来起きるかもしれない公衆衛生上の緊急事態から市民を守ることができると指摘。

なお、ウィリアムズ氏が言及する「今できる行動」には、「公衆衛生上の誤った情報に体系的に取り組むこと」「学校・職場・公共施設などの屋内空間の換気を改善すること」などが挙げられています。

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in メモ, Posted by logu_ii

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